この記事は、少年隊「ABC」の歌詞の意味を考察します。
1987年に発売されたこの曲は、テンポ良くビートの効いたサウンドに力強い歌唱と、切れのあるダンスで魅了して、人気となりました。
それでは、少年隊「ABC」の歌詞の意味を読み解きましょう。
少年隊「ABC」はどんな曲
【ABC】
アーティスト:少年隊
作詞:松本隆
作曲:筒美京平
リリース: 1987年11月11日 (ワーナー・パイオニア)
★チャート最高順位
週間1位、1988年度年間67位(オリコン)
この曲は1987年11月に少年隊の7枚目のシングルとして発売されました。
オリコンのシングルチャートでは最高・週間1位を記録しています。
少年隊「ABC」の歌詞の意味を考察
タイトルのアルファベットには、「最初の一歩から慌てないで、ひとつずつ堅実に」とのメッセージが込められています。
人は恋をすると、つい気がせいて、一段飛ばしで階段を駆け上がってしまうものです。
それでは、この曲の主人公の男性と相手の女性はどうでしょうか。
お互いの胸の中に生まれた、小さな淡い恋心を、互いをつつみこむ大きな愛へと育て上げることは、できるのでしょうか。
冬の夕暮れ空は、淡い灰色で、雪雲が低く、彼らの頭上にたれこめていました。
公園の木々や建物、そして彼のコート、全てが無彩色の世界で、彼女の赤いマフラーだけが浮いています。
吹き上げる噴水の色でさえ、寒々しく見えました。
彼は長い沈黙の中、彼女が言葉を発するのを息を殺して待っていました。
ー傷つくのが恐いから、誰も好きにならないって決めたんだ。
先ほど、口をついて出た言葉は、もう取り返しがつきません。
嘘じゃない、正直な気持ちを告白したつもり。
それなのに、彼の心には、無数の矢が刺さったように痛くて辛いのです。
自分よりも、もっと傷ついているのは、彼女のはずなのに。
「…そう」
「…そうなんだ」
そう呟いて、口をつぐんだ彼女のほの白い顔には、何の表情も読み取れません。
二人はほんの少しだけ距離を離して、公園の遊歩道を歩きます。
彼女ももう、隣に寄り添おうとはしませんでした。
失恋の痛手を経験すると、二度目の恋はどうしても臆病になります。
でも、それは独りよがりな恋からは愛は生まれない、相手を思いやり、相手の歩調に寄り添うことを知ったことから生まれた優しさです。
なのに、なぜでしょう。
誰かを愛するたび、もう傷つきも傷つけもしたくないのに、互いに痛手を残してしまう。
ーお互い様じゃないか。
君だって、新しい恋に踏み出すのが怖い、と言ったのだから。
臆病なのは、僕だけじゃない。
ふと、彼女が公園の奥の遊具を指さしました。
「あれ、もうすぐ撤去されるんだって。老朽化ですって」
指の先には塗装のはげたメリーゴーラウンドがありました。
「好きだったな、メリーゴーランド」
ぽつりとつぶやいた彼女の言葉に、「じゃあ、乗る?」と考えるよりも早く、口に出ました。
「私だけ?あなたは?」
「ここで観てるよ」
彼が機械にコインを入れると、カノンの調べに乗せて、ゆっくりと白馬たちが息を吹き返します。
「ふふっ、子供のころに乗っていた時より、何だかすごく目線が高く感じるわ」
「そりゃそうだよ。君が大人になった証拠だ」
「あなたも乗ってよ」
「いいよ、俺は」
あどけない笑顔に戻り、喜んでいる彼女の顔を見るだけで彼は、充分、満足でした。
しかし、それと同時に、彼女への思いが強くなればなるほど、胸が痛いのです。
恋心はいつも、硬く脆い殻に包まれた卵のようです。
少しでも力を入れれば、砕けてしまいそう。
焦りは禁物、じっくり時間をかけて愛情をかければ、いつか羽化する時がやってきます。
その時の雛は、どんな姿を見せてくれるのでしょうか。
空を見上げると、いつの間にか雲は消え、群青色の空には星が瞬いていました。
彼は意を決して、馬から降りた彼女に、駆け寄りました。
「取り消すよ、さっきの言葉、取り消す!」
彼女は目を丸くして、彼を見つめています。
「これが最後の恋なら、もう後悔することも無いから。
だから、僕は君を好きな気持ちから、もう逃げないし、嘘をつかない」
その言葉に彼女はじっと、彼の眼を見つめたまま、唇をきゅっと引き締めると、涙目で軽く彼の頭をこづきました。
「謝ってよ」
「ごめん」
「ほんとは泣きたかったの、我慢してたんだから」
「ごめん、本当にごめん」
「…許す」
消え入りそうな声でつぶやくと、彼女は涙を拭いて、笑顔に戻りました。
「ありがとう、もう二度と言わない、約束する」
ふと、あたりを見回すと、いつしか大広場には、イルミネーションが輝き、たくさんのカップルが手をつないで散策し、お互いの笑顔をカメラで撮りあっています。
「僕たちも行く?」
「ううん、いい。他の誰かと同じ思い出は、欲しくないから。」
「…そうだな」
彼の黒いコートのポケットのなかには、彼女の小さな華奢な手が、すっぽり収まっています。
彼女の手が微かに震えているのに気づきました。
彼女の手の上から、彼は自分の手を重ねました。
ー大丈夫だよ、恋に臆病な者同士、二人で一から初めて行けばいいさ。
一歩一歩、階段を踏みしめていこう。
心なしか、彼女の凛と、前を向いた横顔が、先ほどより大人びて見えました。
こうして、二人の物語は幕を開けたのです。
まとめ
少年隊「ABC」の歌詞の意味を考察しました。
主人公の男性は相手の女性に対する気持ちは傷つくのが怖くなり、意に反した言葉を口に出してしまいます。
傷つくのが怖いというのは彼女も同じでした。
しかし、落胆する彼女の姿を前にして彼は思い直します。
傷つくのを恐れて恋の止めるのではなく、自分の気持ちに素直になり、一歩一歩と階段をを進めていこうと…。
彼はその気持ちを彼女に伝えると、彼女は頷き、新たな二人の物語が始まるのでした。
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