この記事は、山下達郎「RIDE ON TIME」の歌詞の意味を考察します。
「RIDE ON TIME」は、シンガーソングライター山下達郎の6枚目のシングルとして、1980年5月にリリースされました。
山下はこの曲で初のオリコンチャート入りを果たし、2003年にはドラマの主題歌として再発売されました。
それでは、「RIDE ON TIME」の歌詞の意味を読み解きます。
山下達郎「RIDE ON TIME」はどんな曲
【RIDE ON TIME】
アーティスト:山下達郎
作詞・作曲 :山下達郎
リリース: 1980年5月1日発売 (AIR ⁄ RVC)
★チャート最高順位
1980年年間25位(オリコン)、
山下達郎といえば、数々のCMソングで視聴者の心を鷲掴みにし、様々なアーティストに名曲を提供してきたシティポップの先駆け的な存在です。
「RIDE ON TIME」は1980年5月に発売され、同年の年間オリコンチャートで25位、シングル販売は41.7万枚のヒットとなりました。
山下達郎「RIDE ON TIME」の歌詞の意味を考察
このRIDE ON TIMEも山下らしい爽快なナンバーであり、ドラムの軽快なビートや、間奏の伸びやかなアルトサックスがいい味を出しています。
RIDE ON TIME=「乗り遅れるな」。
時代は高度経済成長期を終え、巷のニーズはソフィスティケートされたものへ移り変わる時代。
まさに時流という名の風をとらえた一曲に仕上がりました。
シティポップというと、昨今は、国内外ともにそのメロディ構成が高く評価されていますが、もちろん歌詞は、メロディを引き立てるための添え物ではありません。
この曲はもともとカセットテープのCMに使われたものですが、サイパンのビーチで撮影されたその映像は当時としては斬新なものでした。
日没の空をバックに、指で視聴者を撃ちぬく山下の姿は、新鮮に映ったものです。
この曲の歌詞も、洗練されたCMの世界観を充分に伝えるものとなっています。
眩しい太陽の下、アクアブルーの波打ち際を疾走する、アイボリーのジープは、目にも鮮やかなコントラストを描きます。
古くごわごわとした殻を破り捨て、新たな自分に生まれ変わる瞬間です。
生まれたての体は、車窓から吹き込む生温い風も、嗅ぎなれた潮の香りも、新鮮な喜びをもって迎え入れてくれます。
じっとしてなんかいられない。
背中には羽根があれば、車を乗り捨ててたちまち風を切り、飛んでいくでしょう。
何がこんなに彼の心を浮き立て、弾ませるのでしょうか。
車は、さらに速度を増し、砂埃をあげて走り続けます。
急げ、急げ!
夕陽のように真っ赤な、珊瑚のようなこの心が、潮風にさらされ乾いてしまわないうちに、あの人のもとへ届けるんだ。
情熱は褪せてしまうのもあっという間だ。
君に捧げる贈り物だって、時が経てば砂の色に変わってしまう。
走れ、走れ。南風よりも早く、君に届けよう。
恋の始まりは、子供の頃の、わけもなく心浮きたつ感覚によく似ています。
まだ生まれて数年しかたたない体は、爪も髪も、細胞のひとつひとつがピカピカです。
目にするもの、触るもの、聞こえるもの全てが新鮮で、驚きの連続です。
今、彼の網膜に映る景色も、何の混じり気もなく鮮やかな色彩で焼き付いています。
君に出会うまでは、空も海も灰色のフィルターが、かかっていたんだ。
僕は自然が生んだ本当の色を知らなかった。
海はエメラルドを思わせるような緑がかった碧い色、空の色は白を混ぜたような淡い青からサファイアブルーのグラデーション、白砂は柔らかなアイボリー。
そして君は、雲間から差し込む太陽の光のように、まばゆい黄金色をしているんだ。
海外のことわざで「女神の前髪を捕まえろ」というものがあります。
古代ギリシャの詩によるもので、「幸運の女神は前髪しか生えていない。
女神が通りすぎたあとに後ろ髪を掴もうとしても、すでに時遅し」ということです。
ほんの一瞬の躊躇が、その後の人生を大きく変えてしまうことは、ままあります。
あの時、素直に思いを伝えられていたら。
もう少しの勇気があったなら。
人生は小さな決断の連続で成り立っています。
無数の分かれ道が広がり、その先には無数の未来が広がっているのです。
それを一寸先は闇と取るか、白紙だからこそ面白いと取るか。
恐らく、彼は後者の人間でしょう。
彼にとっては愛する人こそが、幸運の女神なのかもしれません。
インスピレーションを与え、活力を与えてくれる存在。
それは恋愛の枠を超えた、もっと大きな愛そのものなのかもしれません。
山下の初期の曲は、スティービーワンダーや60~70年代のモータウンサウンドを連想させる、R&B、ロックが主流です。
ベースのソリッドな重低音やギターのカッティングを前面に押し出し、音楽通をうならせる仕上がりとなっています。
現在のヒットメーカー、山下達郎しか知らない若い世代の方に聴かせたら、驚かれるかもしれません。
RIDE ON TIMEは、誰の耳にも馴染みやすい、爽やかなJ-POPとして、彼にとっても音楽界にとってもターニングポイントとなった作品でした。
まとめ
山下達郎「RIDE ON TIME」の歌詞の意味を考察しました。
1980年にこの「RIDE ON TIME」がリリースされてから2年後、山下は事務所の後輩である竹内まりやと結婚し、一女をもうけました。
その後も、同じシンガーソングライターである竹内と二人三脚で名曲を生み出し、現在に至ります。
シティポップへの転換と成功、公私ともに信頼できるパートナーとの出会い、これらも元は、ひとつひとつの小さな決断の積み重ね、「チャンスの女神を捕まえた」結果だと思うのです。
幸運の女神は、韋駄天のように素早く過ぎ去るとのこと。
あなたも女神に出会ったら、躊躇わず、臆せず、しっかりと前髪を掴まれてください。
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