この記事は、「浪花節だよ人生は」の歌詞の意味を考察します。
恋する女性の哀しい定めを情緒豊かに唄いあげたこの曲。
一般的には1984年発売の細川たかしの歌唱で知られますが、多くの歌手に歌い継がれる演歌の名曲です。
それでは、「浪花節だよ人生は」の歌詞の意味を読み解きます。
細川たかし「浪花節だよ人生は」はどんな曲
【浪花節だよ人生は】
アーティスト:細川たかし
作詞:藤田まさと
作曲:四方章人
リリース: 1984年8月21日(日本コロムビア)
「浪花節だよ人生は」は当初、1976年に演歌歌手・小野由紀子のシングルとして発売されました。
その後、1981年に浪曲師の木村友衛がこの曲を引き継ぎます。
そして1984年8月に同曲をカバーした細川たかしのシングルが発売されて、人気を博し、同年末の日本レコード大賞・最優秀歌謡賞に選ばれました。
細川たかし「浪花節だよ人生は」の歌詞の意味を考察
人生においてどん底まで落ちていってしまう男というのは、あなたもどこかで風の便りに聞かれたことがあるかもしれません。
一方、まりが斜面を弾みながら転がり落ちるように、身を持ち崩す女、というのも一定数はおられるようです。
「何度、同じ間違いを繰り返せば気が済むんだ」
「あなたは痛い目を見なきゃ分からないのよ」
残念ですが、こうしたことを言われてしまう女性は、周りが叱ろうが忠告しようが、生来の性分のようなもので、改めるのは難しいようです。
親にも見捨てられ、友人には愛想をつかされ。
そして男たちにもてあそばれながら、年齢を重ねていくのでしょうか…。
今夜も、とある駅前の酒場で、お互いの傷をなめ合うような恋物語が始まろうとしています。
「ねえさん、良い飲みっぷりだな。飲める女は好きだな、俺」
煙草を灰皿にぐりぐりと押し付けると、男はねっとりとした視線を女に投げかけました。
「やめてよ。おだてられたら、止まらなくなっちゃうわ。歩けなくなったら、あんた、おぶってくれるの?」
けん制しつつも、女の声には甘えるような色が混じっています。
「いいよ、いいよ、おぶってく。伊達に毎日、力仕事はしてないさ。あんたみたいな細っこい女は、ひょいっ、だ」
そう言って、男はおどけて女の肩を抱きました。
「やぁだ!あたし、あなたのこと、まだ何も知らないのよ」
目尻を赤く染めて、男の太い腕から身をよじるのは酔いのせいか、羞恥心か。
下瞼のやつれぐあいに、彼女が異性に対して、自堕落な生活を送ってきたことが見てとれます。
純情ぶっても、歳を重ねれば、隠せないことは多々出てくるものです。
「おっと」
男は慣れた手つきで彼女の肩を抱き直しました。
「今からゆっくり知っていけばいいさ。男と女の始まりなんてそんなものだろ」
このぐらいの切り返しは、水商売に片足を入れたことのある男なら、できて当たり前です。
しかし、彼女にしてみれば「頭の切れる人だ」となってしまうのです。
こうして、女はまた、一目ぼれという名の、新たなぬかるみにはまります。
さて、この歌詞に繰り返される浪花節とは何を表すのでしょうか。
浪花節は明治から戦前にかけて流行した寄席芸のひとつで、人情ばなしを扱ったものが人気でした。
転じて、情に脆く、計算ずくで動かない人を「あの人は浪花節だ」と表現するようになったのです。
この主人公の女性も、よくいえば、情に厚い女です。
「俺は子どものころから身寄りらしい身寄りがいなくてね」
そんな男のとってつけたような身の上話でさえ、うん、うん、と時には目に涙を浮かべて聞いています。
根は、すこぶるお人好しで優しい女性なのです。
しかし、このせちがらい世の中、優しいだけでは生きていけません。
その優しさを脇の甘さと捉え、つけこむ輩(やから)はどこにでもいるものです。
そういうことがあってか、女は、男の暗い瞳の奥を一生懸命に探ろうとします。
指の長さ、耳の形。声のトーン。
ありとあらゆる五感を研ぎ澄まして、少しでもその男の本心を見抜けるポイントを探し出そうとします。
しかし、それは、いわばこれまで彼女を通り過ぎて行った男たちと違う点を見つけ出し、自分が彼に惚れたことに正当性を持たせるための言い訳にすぎません。
「この人は違う」
言い訳とわかっていても、信じずにはいられない、哀しい女のさがです。
いつも男の隙だらけの嘘で、恋は終わりました。
いつも男の嘘だらけの口説き文句で、恋が始まりました。
女も、嘘で雑に塗りつぶした、隙だらけな生き方しかいていないから、そんな男に振り回されるのです。
そうと分かっていても、すがってしまうのは、惨めな女のさだめです。
そうしていつのまにか、夜の闇に身を溶かし、誰からも忘れられて亡き者にされてしまう。
それが惨めな女の一生です。
そんな彼女を花に例えるならひっそり、夜に咲く月見草です。
月見草の花言葉は「ほのかな恋」
たった一夜の儚い命です。
しぼんだ花は哀れみを受けることもなく、男の靴で無残に踏みつぶされました。
思い返せば、彼女の恋はいつもそうでした。
藁をも掴む思いで細枝にぶら下がり、案の定ぽきりと折れた枝とともにしたたか地面に叩きつけられる。
その繰り返し…。
これが愚かな女の一生です。
それでも、「浪花節」と彼女の生涯を評するあたり、やはり彼女には、ぎりぎりで見捨てることのできない、愛嬌や健気さといった魅力があるのです。
いつか彼女が手遅れにならないうちに、幸せな恋をすることを願わずにはいられません。
まとめ
「浪花節だよ人生は」の歌詞の意味を考察しました。
お人好しで情に厚く、根は優しい女性…。
しかし、少し不器用で要領もよろしくなくないのでしょうか?
なぜか人生がうまく立ち行かない様子です。
あなたの周りでもそのような方はおられるでしょうか。
もしおられたら気にかかってしまい、心が落ち着かないですね。
そんな風に気を持たせてしまうのもこの曲が多くの人々の心を掴んで離さない理由のひとつなのかもしれません。
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