吉幾三「雪国」の歌詞の意味を考察!女性の叶わぬ想いが切ない

昭和歌謡

この記事は、 吉幾三「雪国」の歌詞の意味を考察します。

1986年に発売のこの曲は、自らが作詞・作曲を手がけ、主人公の女性の別れた男性への想いを情感たっぷりに歌い上げ、多くの人々の心をつかみました。

それでは、吉幾三「雪国」の歌詞の意味を読み解きましょう。

吉幾三「雪国」はどんな曲

【雪国】

アーティスト:吉幾三

作詞・作曲:吉幾三

リリース: 1986年2月25日(キャッツタウンレコード)

★チャート最高順位
週間1位、1987年度年間3位(オリコン)

「雪国」は1986年2月にリリースされた、吉幾三の代表曲です。

吉幾三はシンガーソングライターでもあり、この曲の作詞、作曲を自ら手がけました。

発売後、じわじわと人気を集め、1987年度のオリコン・シングルチャートでは年間ランキング3位、売上枚数は33.6万枚を記録しました。

そして、正統派演歌歌手としての地位を、ゆるぎないものにしました。

 

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吉幾三「雪国」の歌詞の意味を考察

吉幾三が描写した車窓の景色は、彼の故郷、青森の冬を彷彿とさせます。

北陸を、慎ましく辛抱強い手弱女(たおやめ)に例えるとするなら、東北は、無骨で頑固な益荒男(ますらお)でしょうか。

 

この歌の主人公の女性が愛した人も、いつもむっつりと背中を向けて、ストーブの前にどっかりと腰を下ろしているような、そんな男性を彷彿とさせます。

歌詞から浮かび上がる二人の恋は、雪道を照らす月の光のようでした。

 

大きな背中を丸め、ちびちびと熱燗を飲む彼の姿には、主人公と深い仲となった今でも、容易に近づけない恐ろしさがあります。

酒がすすむと、ぐっと彼女の細い腰を抱き寄せ、黙って猪口を差し出すのが、彼の数少ない愛情表現でした。

 

群青色の急行に揺られ、彼女は、二人のなれそめに思いを馳せます…。

出会いは彼女が働く弁当屋でした。

 

いつも油まみれの作業服姿で、「のり弁ひとつ」。

たまにぽつりぽつりと、言葉を交わすと、北国の訛りがありました。

彼女は敢えて素性は聞きません。

 

この都会の片隅に暮らす人々は、皆、脛に傷ある身。

皆、過去を捨てて故郷を捨てて、助け合って生きてきたのです。

 

二人が馴染みの仲となったのも、ごく自然の成り行きでした。

愛の言葉を交わすこともなく、薄い布団にくるまり、凍えぬようにしっかりと抱き合って温めあった夜。

彼女は、夢うつつのなかで、父親のぬくもりを思い出していました。

 

やがて、月日は流れ、弁当屋は潰れ、彼女は、夜の酒場で働くようになりました。

柄の悪い男たちは、浴びるように酒を飲みます。

やさぐれた男たちの酒臭い息にも、卑猥な冗談にも…、濃い化粧にも慣れました。

 

 

彼の姿が消えたのは湿った初雪がひとつ、ふたつ落ちる頃でした。

綺麗に畳まれた布団。

ちゃぶ台の上の手つかずの食事。

戸棚にしまっておいた猪口と徳利は、そっくり姿を消していました。

 

「どこにでも行くがいいさ」

 

吹けば飛ぶような、薄い縁だったんだ。

唇を震わせ、彼女は自分に言い聞かせました。

虚勢のひとつでも張らなければ、きっと泣き崩れてしまう。

 

彼女は、グラスになみなみと日本酒をそそぎ一気にあおりました。

あられ混じりの冷たい風が、うなりをあげて窓を震わせていました。

 

 

やがて、いくばくかの月日が経ち、街はクリスマスムード一色になりました。

オレンジ色の光が眩い中を、彼女は同伴客とともに歩いていました。

今日の客は、とりわけしつこい様子です。

オレンジ色の光は、歩みを進めるにつれ、ピンクのネオンに変わっていきました。

客の手が、肩にまわされた瞬間。

 

 

彼女は思わず酔客をつき飛ばすと、タクシーに飛び乗り、駅へと急ぎました。

青森駅への最終列車は、もうすぐ出ます。

 

 

彼の素性を知ったのは、男が出ていく数日前でした。

その日は珍しく、彼は饒舌だったのです。

 

八戸の鉱山に関係する工場で働いていたこと。

妻と幼い娘を事故で亡くしたこと。

経営難で勤め先も潰れ、死に場所を探して、東京にたどり着いたこと。

弁当を手渡す彼女の笑顔に在りし日の妻を重ね、癒されていたこと。

 

洗い物をしながら、背中で聞いていた自分をけり飛ばしてやりたい。

どうせ深酒をしたのだろう。そうとばかり思っていたのに。

 

ねえ、あんた、こっちにおいでよ。

今度は、あたしが話す番だよ。

 

15で家を飛び出して、17で地元の男と逃げてきた。

逃げてはきたものの、働くあては見つからなかった。

男に暴力を振るわれ、駆け込んだ先が馴染みの弁当屋の夫婦のもとだった。

 

 

あんたの分厚い大きな手の平を見て、あったかい人だと思った。

この人だったら幸せになれると思った。

だから、たかをくくっていた。

夜の店で働いたのも、少しでも生活を楽にしたかったからだ。

まともな学も、コネもない自分が、あんたにしてやれることは、それだけだ。

 

 

泣き疲れ、じんじんと痺れる頭に浮かぶのは、彼の大きな、大きな背中です。

「どこにもいかないで!帰ってきてよぉ!」

彼女の叫びもむなしく、彼の背中はどんどん小さくなります。

「いやだ!いやだ、あんたぁ!」

彼女は彼の背中を追いかけ、手を伸ばします。

もう少しで手が届きそうなのに、届かない。

一緒にいたときからそうでした。

 

彼女はいつも、彼の広く逞しい背中を追いかけていました。

彼が自分の素性を打ち明けた夜。

あの夜が初めて、彼が立ち止まり、振り返ってくれた瞬間だったのでしょう。

 

でも、あたしは気づかなかった。

バカだ、バカだ。あたしは。

 

窓に映るやつれた顔は、おしろいが崩れ、紅の落ちた頬には、うっすらと涙の筋がついていました。

彼女は凍てつく窓に手のひらを押し付けました。

 

彼が八戸に帰ったとは限りません。

もう、すでにいい人を見つけたかもしれません。

 

でも。

せめてもう少し、あんたを追いかけさせて。

お願い、せめて、あたしの気持ちに蹴りがつくまで、あんたを追いかけさせて。

 

夜汽車は暗い、暗いトンネルへと吸い込まれていきました。

今夜はいつ明けるともわからない、長い夜になりそうです。

 

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まとめ

吉幾三「雪国」の歌詞の意味を考察しました。

『好きよあなた』で始まる「雪国」の歌詞…。

雪国を舞台に主人公の女性が、別れた男性への想いを断ち切れず、追いかけようとしますが、思うようにならない切ない心境を綴った内容でした。

 

筆者は、吉幾三がこの曲を情感たっぷりに歌うことにより、聴いていると、主人公の女性の状況や思うようにならないさまがまぶたの裏に浮かんでくるようでしんみりとした気持ちになります。

時がたち主人公の女性の日常にも春が来て、彼女の表情に笑顔が戻ることを祈らずにはいられません。

 

 

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