この記事は、荻野目洋子「六本木純情派」の歌詞の意味を考察します。
1986年に発売されたこの曲は、パンチの効いたダイナミックでキュートな歌唱で人々を魅了して、人気となりました。
それでは、荻野目洋子「六本木純情派」の歌詞の意味を読み解きます。
荻野目洋子「六本木純情派」はどんな曲
【六本木純情派】
アーティスト:荻野目洋子
作詞: 売野雅勇
作曲: 吉実明宏
リリース: 1986年10月29日(ビクター音楽産業)
★チャート最高順位
週間3位、1987年度年間36位(オリコン)
「六本木純情派」は1986年10月に荻野目洋子の10枚目のシングルとして発売されました。
彼女の代表曲の「ダンシング・ヒーロー 」と同じく軽快なユーロビートに乗せ、都会に生きる若者の空虚感漂う青春を巧みに表現しています。
荻野目洋子「六本木純情派」の歌詞の意味を考察
この曲が登場した1986年。
当時、夜の街を遊び場にする若者たちには、「不良の品格」というものがありました。
大人たちにはわからない、彼らなりの踏み越えてはいけないラインです。
それをわきまえている者だけが、胸を張って「自分は不良だ」と言えたのです。
さて、今夜も大都会の片隅で、一遍のドラマが始まります。
早速、覗いてみましょう。
「構わないで、って言ってるでしょ。ナンパならお断り」
年のころは17,18でしょうか。
ずぶぬれになった少女が、青年の差し出す傘を払いのけました。
「そんなんじゃねえよ、単純に、俺のは親切心。
大体、俺みたいな美形は、ナンパしなくても女の子が放っておいてくれないの」
路上に投げ出された傘を拾うと、青年はもういちど、彼女の頭に掲げます。
「…」
「別に礼なんて言われなくても気にしないけどさ。やっぱ、女の子が夜中にずぶ濡れで歩いてたら、心配じゃん?」
「お節介」
「お節介で結構だよ、傘は返さなくていいから。安物だし、じゃあな」
「待って!」
少女の鋭い声が、青年の背中に刺さります。
「…どうせお節介焼くなら、話ぐらい、聞いてもいいんじゃないの?」
一瞬、青年は呆気にとられた顔をしましたが、ふきだして苦笑いしました。
ディスコでは巷で人気のユーロビートがかかり、若者たちが思い思いに腰をくねらせて踊っていました。
彼女もリズムに乗ると、彼と一緒にリズムを刻みます。
ー踊ってると、束の間いやなことも忘れられるわ。
でも、それもほんのひとときの間だけ。
ここで踊ってる子たちも、皆、泣きたくなるような思いを抱えているのかしら…。
そして、この人も…。
やがて、一息ついて、ジンジャーエールを飲み干すと、ぽつり、ぽつりと少女は今夜の出来事を青年に語り始めました。
彼が浮気していたこと、これまでにも何度も嘘をつかれて、いい加減、頭に来たこと。
「あたしたち、ずっと遠距離でさ。ひと月ぶりのデートだったのよ。
なのに、あいつ、よそで女つくって…」
それを耳にした、ジーンズを腰履きした二人組の男が近寄ってきます。
「え、何?女の子泣かしちゃってー」
「おにいさん、罪だねえ」
青年は険しい顔で冷やかす二人組をにらむと、少女の手をとって立たせました。
「行こうぜ、どうせ泣くなら落ち着いて泣けるとこのほうがいいだろ」
二人は自然と手を取り合うと、騒がしいディスコを抜け出しました。
シャッターを閉めた裏通りは、ここが六本木とは思えないほど静まり返っています。
「こんな可愛い子をほうっておいて浮気かよ、見る目ないなあ、その男。
俺が君の彼氏なら、絶対泣かせるような真似はしないけどな」
「やっぱりナンパじゃないの…」
「違うって、だから俺のは親切心!」
そんな他愛もないやりとりでも、彼女にとっては救いでした。
そういえば、彼のアーモンド形の切れ長の目が、恋人にどこか似ている気がします。
心が落ち着くのは、そのせいでしょうか。
「彼氏の浮気って、しんどかったのは、それだけ?」
そのひと言に、彼女の表情がこわばります。
「全部、吐き出していいよ。親にも友達にも言えないことも、他人なら話せる、ってあるじゃん。俺、聞くよ。
明日バイト休みだから。帰りが遅くなっても平気だし」
少女はくるりと背中を向けました。
「いっぱいありすぎて、言えないわ」
声が湿って震えています。
「なら、無理に離さなくていいよ。…悪い、余計なお節介だったな」
「そんなことない。あんた、良い人ね」
煙草をくわえると、青年は一瞬、遠い目をしました。
「…いい人、か。お人よしなこと言ってると、またヘンな男にひっかかるぜ」
そして、煙草の煙を吐き出すと、
「実は俺も別れたばっかり。俺は振られたほうだけど。『いい人すぎてつまんない』だって」
強がっておどける姿に、思わず苦笑いがこみあげてきました。
「なによ、それ」
笑いながら涙を拭う彼女に、彼は優しく微笑みます。
「お、やっと笑顔になったな。
送るよ、終電を逃したら、親に叱られるどころじゃすまないぜ」
少女は素直にうなずきます。
二人はしっかり手を握ると、家路に向かって歩き出しました。
いつの間にか、雨はあがり、丸い月がビルの上で輝いていました。
朝が来れば、六本木は、夜の喧騒が、うそのように静まり返ります。
やがて、通勤途中のサラリーマン、学校に急ぐ子供たちが行きかう姿は、まるでシンデレラにかけられた魔法がとけてしまったかのようです。
そして、同じように魔法を解かれた彼らも、ごくありふれた日常に戻っていくのです。
まとめ
荻野目洋子「六本木純情派」の歌詞の意味を考察しました。
大都会の東京・六本木を舞台に主人公の少女は少し背伸びして粋がっています。
出会った青年は少し悪ぶっている印象ですが、話してみるとシャイで根は真面目なところもあるようです。
遊び慣れた若者たちが集う夜の六本木。
そんな中で主人公の少女は出会った青年に気持ちを動かされ、粋がっていた心の底にある純情な気持ちに気がつきます。
彼女は自分の気持ちに素直になれたのでしょうか…。
【関連記事】
荻野目洋子「ダンシング・ヒーロー」の歌詞の意味を考察
日本ぶろぐ村