この記事はチェッカーズ「涙のリクエスト」の 歌詞の意味を考察します。
涙のリクエストは1984年に発売されたチェッカーズの大ヒット曲です。
この曲のヒットでチェッカーズの名は不動のものとなります。
藤井郁弥(フミヤ)の少年の面影が残る愛くるしいルックスと、アーティストとしての確かな実力は、たちまち少年少女たちの心をわしづかみにしました。
チェッカーズ「涙のリクエスト」はどんな曲
【涙のリクエスト】
アーティスト:チェッカーズ
作詞:売野雅勇
作曲:芹澤廣明
リリース: 1984年1月21日(キャニオン・レコード )
★チャート最高順位
週間2位 (オリコン)、1984年度年間4位(オリコン)
「涙のリクエスト」は1984年1月に発売されたチェッカーズの2枚目のシングル曲です。
売上枚数は67.2万枚の大ヒットとなりました。
ちなみにデビューシングルの「ギザギザハートの子守唄」は39.6万枚、3枚目の「哀しくてジェラシー」は66.2万枚といずれもヒットしています。
チェッカーズのメンバーは、藤井郁弥(リードボーカル)、武内享(ギター、リーダー)。
高杢禎彦(サイドボーカル他)、大土井裕二(ベース、サブリーダー)。
鶴久政治(サイドボーカル他)、徳永善也(ドラムス)、藤井尚之(サックス他)の7人。
藤井尚之は藤井郁弥の実弟です。
1984年大晦日に行われた第35回NHK紅白歌合戦にはチェッカーズはこの「涙のリクエスト」で初出場を果たしました。
チェッカーズ「涙のリクエスト」の歌詞の意味を考察
この曲も古き良き時代のオールディーズを彷彿とさせる、軽快なナンバーにのせて、初めての失恋を瑞々しく表現しています。
この曲に登場する主人公は、おそらくまだ10代でしょう。
舞台は1960年~70年代初めの西海岸といったところでしょうか。
ちょうどティーンエイジャーがカルチャーの主導権を握り、大人たちに反旗を翻したエネルギッシュな時代でもあります。
当時、若者たちの間で流行したのが、友達の紹介などで知らない相手とデートするブラインドデートです。
今は意味合いが変わってしまいましたが、当時は思春期を迎えた少年少女たちの、プラトニックで可愛らしいデートを指していました。
しかし、いつの時代もなかなか、初恋というのは上手くいかないものです。
悲喜こもごものドラマが生まれ、シャボン玉のようにはじけてあとかたもなく消えてしまう、淡い恋。
この少年の初恋も、あっけなく壊れてしまったようですが、大人からみれば、それも微笑ましいものです。
どうやら途方に暮れているようですが、見て見ぬふりも可哀想。
彼に女心というものを、こっそり教えてあげましょうか。
女の子は、女の子同士にしか分からない秘密を共有しているものです。
初めてハイヒールをはいて出かけた日、脚ががくがくで結局、裸足で帰ってきたこと。
姉のドレッサーから、こっそり口紅とオーデコロンを持ち出したこと。
まるで、競いあうように螺旋階段を駆け上がって、女の子たちは、みるみるうちに大人の女性へと変わっていきます。
ブラインド・デートもいわば通過点です。
賢い女の子ほど、白馬の王子様なんて、そうそう都合よく表れないことを知っています。
思春期を迎えた彼女たちが、大人と子供の間で揺れ動くように、恋心も、夢と現実を天秤に乗せて、ゆらゆらと揺れています。
一方、男の子たちは、そんな女の子の心のうちには見向きもしません。
一度手に入れた財宝は、いつまでも無くならないと信じています。
幼い頃、大事に持ち歩いていたおもちゃが、女の子に変わっただけです。
なので、女の子からの別れ話は、彼らにとって晴天の霹靂です。
聡明な女の子は、別れ話に無駄な労力を割きません。
きれいになるための活力、愛するためのエネルギーは…
もっと素敵な人のために取っておきたいのが、世の女の子たちの本音です。
可哀想なのは男の子です。
なぜ、なぜ、と問い詰めれば、軽蔑の眼差しで睨まれるばかり。
ここは、この歌の少年のように、やせ我慢でも潔く手放すのが、賢明なようです。
それでは、彼の足取りを辿っていきましょう。
背伸びをして、物わかりのいい男を演じてみても、DJにメッセージを託す姿は、いじらしいものです。
トランジスタという歌詞が出てきますが、おそらく彼の愛用していたラジオでしょう。
まだダンスホールにも行ったことのない幼い二人が、頬を寄せ合い、ぎこちなくも楽しそうに手を取り合う姿が浮かんできます。
大人からすれば思わず吹き出してしまう様な、子供じみた愛の誓いも、彼らにとっては大まじめです。
今は錆びついて光を失ったロケットも、あの頃は彼女の胸で、きらきらと輝いていました。
またすぐ会えるのに、帰り際は涙ぐみ、このあいだ会ったばかりなのに、顔を見るなり弾けるような笑顔で胸に飛び込んでくる。
いつまでもそんな日々がつづくものだ、と疑いもしなかったのかもしれません。
もしくは、恋ははかないものだと知っていても、俺達は違うと、堅く信じていたのかもしれません。
ロケットの輝きが、徐々に鈍くなるように、二人の間にも隙間風が吹くようになります。
いつも二人で同じ景色を見ていたのに、見つめる先が変わったのは、いつからでしょうか。
やがて、彼女の視線の先には、知らない誰かが佇むようになります。
どこかで歯車が狂ったわけでも、ボタンを掛け違えたわけでもない、ただ昔より二人がほんの少し大人になった、それだけの結果です。
そのことに気づかないほど、彼も子供ではありません。
ここでみっともなく取り乱したり、相手の男に詰めよるのは、自分のプライドが許しません。
少年は、いつか憧れたキネマの青年のように、精一杯いい男を気取って見せます。
人からみれば、気障で滑稽に見えるかも知れません。
しかし、ここでも少年は大まじめです。
これも少年が大人になる、小さな節目なのかもしれません。
二人の心を結び付けたダンスナンバーは、こうして二人の心が離れた今でも、見えない糸でしっかりと繋いでいます。
彼女がもしも孤独に打ちのめされそうなとき、悲しみや怒りで押しつぶされそうになったとき、必ずこの曲が自分を彼女の元へ、連れて行ってくれると信じています。
そこに寄りを戻したい、といった打算はありません。
ただ、かつて本気で惚れた娘に、泣いて傷つくような恋はさせたくない、素朴な優しさです。
いつか彼がもう少し大人になった時、愛する人の誕生石がついたリングを送る時、彼は、なけなしの小遣いで買ったシルバーリングを思い出すでしょう。
それは胸の奥がくすぐったくなるような、思い出のフォトグラフです。
オールドスタイルな恋物語は、これでおしまい。
もし一曲だけ、初恋のあの人へ歌を届けられるなら、あなたは何をリクエストしますか?
まとめ
チェッカーズ「涙のリクエスト」の 歌詞の意味を考察しました。
この曲を聴くと、主人公の男の子の失恋してしまった女の子への甘酸っぱい想いが伝わってくるようです。
分かれたことについて自分の心に整理をつけたつもりでも、すぐにまた思い出して未練がましい気持ちになってしまう。
でもそうした気持ちに向き合い、自分の弱さを正直に認めていくことを繰り返し、いろいろな経験を積むことで大人の男になっていくのでしょう。
主人公の男の子はその後、どんな大人の男性になったのかも興味があります。
1984年の古い曲ですが、現在でもその輝きを失っていない名曲だと思います。
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