この記事は、 谷村新司「昴 -すばる-」の歌詞の意味を考察します。
1980年に発売されたこの曲は、 谷村新司の代表曲のひとつです。
シンガーオングライターである自身が作詞作曲を手掛け、今でも世代を超えて聴き続けられています。
それでは、谷村新司「昴 -すばる-」の歌詞の意味を読み解きましょう。
谷村新司「昴 -すばる-」の歌詞の意味を考察
【昴 -すばる-】
アーティスト:谷村新司
作詞・作曲:谷村新司
リリース:1980年4月1日 (ポリスター)
★チャート最高順位
週間2位、1980年度年間12位(オリコン)
「昴 -すばる-」は1980年4月、ロックバンド「アリス」のヴォーカルとして活動していた、谷村新司のソロシングルとして発売されました。
谷村の代表曲ともいえるこの曲は、60万枚もの販売を記録して、ソロ作品としては自身最高となるヒット曲になりました。
高校の音楽の教科書にも度々、採用されているので、ご存じの若い方もおられることでしょう。
谷村新司「昴 -すばる-」の歌詞の意味を考察
昴は、冬の夜空の風物詩である「プレアデス星団」の和名です。
おうし座にある120個ほどの星からなる散開星団で、肉眼でも見ることができます。
ガスに包まれ青白く輝く星々の姿は非常に神秘的です。
平安時代に書かれた清少納言の『枕草子』でもとりあげられ、「すばる」の名前を見つけることが出来ます。
谷村が作詞した「昴 -すばる-」の歌詞には「プレアデス星団」の名もない星たちが懸命に命を燃やし、やがて砕け散るさまが書かれています。
「プレアデス星団」は、比較的若い恒星たちの集まりです。
恒星とは太陽のように自らのエネルギーで輝く星のことです。
生まれたばかりの星は、周りの物質を取り込んで大きくなり、『核融合反応』により非常に長期間、輝き続けます。
「プレアデス星団」の星たちは、人間に例えれば、青春の真っ只中でしょうか。
身のうちに、持て余すほどの強いエネルギーを秘め、清廉な美しい光を放つ昴。
今、この瞬間を生き抜くことに精一杯で、未来など絵空事のように思えた、あの時代…。
やがて身のうちのエネルギーは尽き始め、代わりに思慮深さや寛容さなど、若い頃には持ちえなかった力を身に着けます。
そして年老いた星は、爆発したり白色矮星になったりして一生を終えます。
星たちの一生は、まるで人間の一生のようです。
無常ともいえる定めですが、せめてもの餞(はなむけ)に、主人公の男性は、星たちに役目を与えます。
ちりやごみになって消えてしまう前に、せめて、私にその生きた痕跡を残しておくれ、と…。
誰の目にも止まらなくても、その命の輝きで私を照らしてくれるなら、私だけはお前を覚えていよう、と…。
ああそうか。
あの星は、私そのものだ。
私は、認められたかった。
名も知らぬ誰かでも良い。
私が生きてきた軌跡を、覚えていてほしかったのだ。
凍てつくような寒空の下、主人公は昴「プレアデス星団」に背を向けます。
冷え切った空気は、彼の肺で温められ、ひゅうひゅうと寂しい音を立てては、白い吐息に変わり、夜の帳(とばり)に消えていきます。
彼の頬の血の気は引き、氷のように冷たく青ざめていました。
ゆらりと立つその姿は、まるで闇に浮かび上がる幽鬼のようです。
昴に目を留めるまで、彼は絶望の真っ只中にいました。
まばたきする間に若さを失い、息つく間もなく体が年老いても、まだ自分は何も成し遂げず、こうして混沌の中にいる。
いっそ、針のように皮膚を突き刺す北風に身を砕かれ、このまま塵と化してもいい。
涙にぬれた瞳には、またたく星の数々も、雪雲のような薄もやにしか見えません。
しかし、今は、ひとつひとつの星の姿が、命のきらめきが、はっきりと手に取るように分かるのです。
目に見えない糸に引かれるように、主人公は一点を見据え、道なき道を進みだします。
冷え切り凍えた体と裏腹に、胸の奥は熱く燃えていました。
そうだ。
私が歩けば道ができる。
私が踏み固めたこの道を、残された者が踏みしめる。
そうやって連面と道は続いていくのだ。
昴よ、お前の初の大仕事だ。
この道を照らしてくれ、私がいなくなったあと、後世に残された者が迷わぬように。
人生は、果ての無い暗闇から始まります。
青春とは、暗闇のなかにきらめくダイヤのような輝きです。
その光はごくごく小さなものですが、目を射るほどの眩しい輝きを放ちます。
やがて、若き日にさよならを告げ、守るもの、大切な人が出来たとき、暗闇に道が出来ます。
茜色に染まった一筋の細い道です。
あなたが闇を切り開き、一歩、一歩、歩みを進めるたび、あなたの後には光の帯が続いていきます。
そのあえかな光を頼りに、新しい命を授かった者が、はるかな宇宙のかなたへと歩いていくのです。
これから、あなたが歩いた道を歩くのは、一体、誰でしょうか。
まとめ
谷村新司「昴 -すばる-」の歌詞の意味を考察しました。
昴「プレアデス星団」の星たちに自分の人生を重ね、語りかける主人公の男性。
遠く離れた星たちに思いは届いたのでしょうか…。
主人公の男性はもう若くはなく、これからの人生もさまざまな困難が待ち受けているようです。
昴の星たちに意識を向け、語りかけることで彼の心の中に大きな宇宙的な視点、そして自身に関する大きな信頼が生まれたのでしょう。
主人公の発する「我は行く さらば昴よ」の言霊は宇宙に響き渡り、多くの人々を魅了し続けることでしょう。
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