この記事は、 ザ・テンプターズ「エメラルドの伝説」の歌詞の意味を考察します。
1968年に発売されたこの曲は、萩原健一の甘い歌声と、ロマンチックで神秘的な歌詞が多くの人々を心を掴みました。
それでは、ザ・テンプターズ「エメラルドの伝説」の歌詞の意味を読み解きましょう。
ザ・テンプターズ「エメラルドの伝説」はどんな曲
【エメラルドの伝説】
アーティスト:ザ・テンプターズ
作詞:なかにし礼
作曲:村井邦彦
リリース: 1968年6月15日( フィリップス・レコード/日本ビクター)
★チャート最高順位
週間1位、1968年度年間16位(オリコン)
「エメラルドの伝説」は1968年6月に、ザ・テンプターズの3枚目のシングルとして発売されました。
時はグループ・サウンズの熱気に日本中が包まれた時代。
後に名優として花開く、萩原健一が、ザ・テンプターズのリードヴォーカルを務めていました。
王子様のようなモッズスタイルに身を包んだメンバー達は、少年少女の心をとりこにしました。
そして、1968年度のオリコンの年間シングルチャートでは第16位、売上枚数は46.2万枚となりました。
ザ・テンプターズ「エメラルドの伝説」の歌詞の意味を考察
昔々、ある小さな村に大変、美しい少女がいました。
誰も彼女がどこからやってきたのか知りません。
いつの間にか、風の精のようにふらりとこの村に現われたのです。
少女は、まるで猫のようにしなやかな身のこなしをしていました。
朝日が昇るのと同時に、竪琴を胸に抱き、うっとりするような甘い声で歌うのです。
村の青年たちは、たちまち彼女の虜になってしまいました。
主人公の少年も例外ではありません。
しかし、彼は他の青年のように嫌がる彼女の手を引いて、無理やり口説くような真似はとても出来ませんでした。
言葉を交わすことはありませんでしたが、彼は彼女の姿を見るだけで、明日も希望を持てるような気がしました。
しかし、青年たちの執着は、やがて取り返しのつかない悲劇を生みます。
ある晴れた日の朝、世を儚んで、少女はその身を湖に躍らせたのです。
淡い水色に澄んだ湖は彼女の体を飲み込んだ瞬間、たちまち目も覚めるようなエメラルドグリーンに変わりました。
若者たちは、少女が消えたことを、嘆き悲しみましたが、数か月もすると、誰も娘のことは口にしなくなりました。
彼らは、何事もなかったように村娘たちと戯れるようになりました。
村の娘たちは、緑色に染まった湖を、「少女に呪われたのだ」と口々に噂しました…。
やがて時が経つにつれ、忌まわしいものに蓋をするように、誰も娘のことを口にしなくなりました。
しかし主人公は唯一、いつまでも、娘のことを決して忘れはしませんでした。
ある朝、彼は、両手いっぱいの花束を抱えると、少女が身を投げた湖に捧げました。
「ごらんよ、君が大好きだった花を摘んできたよ。これで少しはさみしくないだろう」
彼は湖の水面に向かって話しかけましたが、その水面は鏡のように、彼のあどけなさが残る顔をうつしているだけです。
目を閉じれば、思い浮かぶのは、最後に彼女を見かけた日、彼とはじめて目があったときの彼女の驚いたような表情です。
「どうして、あなたは私を言いなりにさせようとしないの?」
彼女の緑色の瞳は、そう問いかけているようでした。
それだけ、少年の瞳は彼女の心をおもんぱかる、優しさに満ちていたのです。
「そうさ、君は汚しちゃいけない存在なんだ」
彼はそう呟くと、王子のように膝まづき、両手でその緑色の水を丁寧にすくいました。
水面に彼の涙がぽとりと落ちました。
「君は、故郷に帰ったんだね。そうさ、君の美しさはこの世のものじゃなかったもの。誰かが独り占めしてはいけなかったんだ」
それでも、彼の心には哀切と思慕がくりかえし押し寄せてきます。
「一目でいいんだ。一目でいいから、その姿をもう一度見せておくれ」
彼は、そっと水をすすりました。
湖の水は、ほのかに甘く、彼の心の澱を洗い流してくれるようでした。
目を閉じて、水の甘味の余韻に浸っていると、すぐ目の前に、口づけを受けた彼女が、エメラルドの瞳をうるませて、はにかんでいるように思えました。
その日を境に、少年の姿を見たものは誰もいなくなりました。
村人は口々に「湖の主になった娘にひきずりこまれたのだ」と噂しました。
それも時が経つにつれ、誰も口にしなくなり、村で湖と少年の伝説を知るものは、誰もいなくなったということです。
さて、ドイツでは、睡蓮の花は、水の妖精の化身と言われています。
ギリシア神話でも、神であるプリアポスに言い寄られた乙女ローティスが、とうとう天に祈りを捧げ、湖に咲く美しい睡蓮に姿を変えてしまった話があります。
彼が思うように、やはり彼女もこの世の人間ではなかったのでしょう。
世界には、理屈では説明できないことが多々あります。
彼女も、神様が悪戯にこの世界によこした妖精だったのかもしれません。
それとも、主人公が多感で純粋な心を持っていた少年だったからこそ、愛らしい少女の姿に、この世のものとは思えない神々しさを投影していたのでしょうか。
少年は誰しも、心の中に自分だけの女神を秘めているものです。
それは、思春期という、大人でも子供でもない特別な時間が見せる、甘く美しい白昼夢です…。
まとめ
ザ・テンプターズ「エメラルドの伝説」の歌詞の意味を考察しました。
主人公の少年は美しい少女に想いを寄せていましたが、彼女はある日、湖に身を投げてしまいます。
すると湖は少女の瞳のようなエメラルド色に染まるのでした。
少年は在りし日の少女の面影を思い出しては、君に会いたい!との気持ちが強くなります。
そして少女の瞳に口づけをするかのごとく、湖の水に口づけをするのでした。
神秘的でロマンチックな内容ではありますが、一方でやりきれないような気持ちにもなります。
さて、グループ・サウンズという白昼夢のなかで、きらきら輝いていたザ・テンプターズのメンバー達も、やがて大人になり、それぞれ思い思いの道を歩み出しました。
この少年も、大人になり、生身の女性に恋をする日が訪れることでしょう。
しかし、幾つになっても青春の記憶は、色褪せず、まばゆいきらめきを放つものなのですね…。
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