チューリップ「心の旅」の歌詞の意味を考察!青春の旅立ちと別れ

青空と雲昭和歌謡

この記事は、 チューリップ「心の旅」の歌詞の意味を考察します。

1973年に発売されたこの曲は、シンプルで力強いメロディ、甘酸っぱいボーカルとハーモニーなどが相まって、大人気となりました。

それでは、チューリップ「心の旅」の歌詞の意味を読み解きましょう。

チューリップ「心の旅」はどんな曲

【心の旅】

アーティスト:チューリップ

作詞 ・作曲: 財津和夫

リリース: 1973年4月20日(EXPRESS)

★チャート最高順位
週間1位、1973年度年間7位(オリコン)

「虹色の湖」は1973年4月にチューリップの3枚目のシングルとして発売されました。

青年の旅立ちとほろ苦い別れをテーマにかかれたこの曲。

一説によると、ヴォーカルの財津和夫の経験をもとにして作られたものだと言われています。

1973年度のオリコン・シングルチャートでは年間ランキング7位、売上枚数は50.7万枚を記録しました。

 

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チューリップ「心の旅」の歌詞の意味を考察

大学のキャンパス

主人公の青年と恋人の女性。

二人が出逢ったのは、大学の入学式でした。

他の若者たちがそうであるように、彼らは糸が引き寄せ合うように心惹かれていきました。

大学の講義のあと、他の学生に見られないよう、こっそり指先を触れ合わせて帰るのが、二人の密かな愛情表現でした。

 

「私が、あなたのポケットに収まるぐらいに小さかったら、いつも一緒にいられたのにね…。」

そう呟く彼女が愛おしくて、思わず道端でぎゅっと抱きしめたこともありました。

二人で過ごした4年間は、瞬く間にすぎていきました。

 

 

「ずっと一緒にいられると思ってたのに。

あなたにとって4年間は退屈するほど長くても、あたしにとってはあっという間だったのよ」

 

彼が意を決して、遠くの街へ旅立つことを告げた卒業式。

彼女はそう言ったきり、その日は口を聞いてくれませんでした。

 

旅立つ前の日の夜は、月がきれいな空でした。

カーテンの隙間から、薄明かりが差し込んできます。

狭いベッドの上で、彼は身をよじるように寝返りを打ちました。

満月

「起きてるの?」

ふいに目が合った彼女に声をかけると、彼女は黙って頷きました。

 

「眠れないの」

「そうか」

深夜2時、外は先ほどまでの喧騒が嘘のように静かです。

 

彼女のアパートは、駅前の繁華街の近くにありました。

夢を語り、愛を育み、そしてこの街を去ることを決めたのも、全てこの小さな部屋での出来事でした。

 

「あなたはきっと、私のこと、忘れちゃうわね」

彼女はむくりと起き上がり、寂しげに微笑むと、感情の消えた声で言いました。

「心配しないで。私も、あなたの知らない人と愛を育むわ」

 

彼は慌てて飛び起きました。

「そんなこというなよ。手紙を書くよ。毎日だって電話する」

 

さしのべられた彼の手を、彼女はぴしゃりと跳ね除けます。

「いらない」

「余計な意地を張るなよ」

彼女は鋭い瞳で彼を睨みつけます。

 

「分かるのよ。あたしよりも夢中になれるものを見つけたんだって。

あなたは私そっちのけで、まだ見ぬ都会に恋してるんだわ。

男っていつもそう。あたしたち女は置いてきぼり。

…他の女に浮気されるより辛いわ。」

 

「そんな…」

「じゃあ、あたしも行くっていったら、しがみついたら連れて行ってくれるの?」

 

彼女の挑むような視線に、彼は言葉を失います。

「…わがまま言うなよ」

彼女はくるりと背を向けると、また横になりました。

 

「俺だってさ…。思い付きで言ったわけじゃない。

男ってのはさ、ひとっところにはいられない生き物なんだ。

女からしたら、それこそ、わがままって言われても仕方ないけどさ…」

 

彼女の返事はもうありませんでした。

代わりに静かな寝息が聞こえてきます。

満月とカップル

 

彼はそっと足音を忍ばせて、ベッドから下りると、窓際に立ちました。

街全体が息をひそめて、空が白むのを待っているようです。

 

やがて空が明るくなれば、駅へ向かう学生や大人たちの声で、また街は息を吹き返すでしょう。

そして、その雑踏の中には、片道切符を握りしめてた彼がいます。

 

数時間後、停車場では、数組の家族連れが、旅立つ人の見送りに来ていました。

母に抱かれ手を振る子供。

慣れた口ぶりで、言葉少なに見送りの言葉を告げる夫婦の片割れ。

 

そして、窓から身を乗り出し、頬を押し付け合う恋人たち。

しかし、汽車に乗りこむ彼のそばには、彼女の姿はありませんでした。

 

「私、あなたのこと、大好きだった」

彼の耳に、別れ際、彼女が呟いた言葉が蘇ってきます。

しかし、過去形なのが全てを物語っていました。

駅のホームと電車

俺も好きだったよ。君のこと。

心の中で自嘲気味につぶやくと、彼はジーンズのポケットをまさぐり、ハッとしました。

ーしまったな、煙草をおいてきちまった。

やれやれ、とため息をつき、彼は頭をのけぞらせ目を閉じました。

 

ーもし君が煙草の箱ほど小さくなったなら。

もしも君をシャツの胸ポケットに入れて、世界中を回れたなら、僕は君が憧れた景色の全部を見せてあげるよ。

 

鮮やかな緑の麦畑を眺めながら、彼は窓に強く額を押しつけました。

ー俺は今でも好きだよ、君のこと。

 

窓を押し上げ、幾分、伸びた髪をそよがせる彼の、涙の粒を、四月の爽やかな春風が、さらって遠くへ運んでいきました。

 

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まとめ

チューリップ「心の旅」の歌詞の意味を考察しました。

主人公の青年が夢をかなえるために上京するのを機に恋人と別れることに…。

その出発の前夜の苦しい心境を歌い、愛の終わりと共に心の旅が始まるという内容でした。

 

『虹とスニーカーのころ』など、爽やかなメロディに、男女のボタンの掛け違いを巧みに表現してきたチューリップ。

この曲も、とある男女のどうにもならない心のすれ違いが詩情豊かに描かれています。

筆者も改めて今聴き直すと、遠い昔の青春の日々のみずみずしい気持ちが蘇ってくるようです。

 

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