甲斐バンド「HERO(ヒーローになる時、それは今)」の歌詞の意味を考察

昭和歌謡

この記事は、 甲斐バンド「HERO(ヒーローになる時、それは今)」の歌詞の意味を考察します。

1968年に発売されたこの曲は、ダイナミックな甲斐よしひろのボーカルとバンド演奏が相まって人気となりました。

甲斐よしひろの力強い歌声に、背中を押され、元気づけられた方も多いことでしょう。

それでは、甲斐バンド「HERO」の歌詞の意味を読み解きます。

甲斐バンド「HERO」はどんな曲

【HERO(ヒーローになる時、それは今)】

アーティスト:甲斐バンド

作詞・作曲:甲斐よしひろ

リリース:1978年12月20日(東芝EMI )

★チャート最高順位
週間1位、1979年度年間13位(オリコン)

「HERO」は1978年12月に発売された甲斐バンド11枚目のシングルです。

発売翌年には時計のCMソングに起用され、爆発的な人気を誇り、2月にはバンド初のシングル版チャート1位を獲得しました。

1979年度のオリコン・シングルチャートでは年間ランキング13位、売上枚数は63.7万枚を記録しました。

 

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甲斐バンド「HERO」の歌詞の意味を考察

この歌に耳を澄ませ、目を閉じれば、あなたを古き良き時代の映画館へと誘ってくれます。

銀幕のなかの、少年のようなあどけなさが残る主人公は、かつての名俳優、ジェームス・ディーン。

どこか斜に構えたような、寂しげな瞳と不満げに尖らせた唇が印象的です。

 

映画館の客は一人だけ。

臙脂の椅子にどっかり腰かけて、背の高い青年が鑑賞しています。

髪は遠目からでも目立つような金髪、左耳にはシルバーのピアスが幾つも輝いてます。

 

青年は前のめりになり、一心不乱にスクリーンを見つめています。

そんな彼の視線にお構いなしに、ジェームス・ディーンはヒロインをバイクの後ろに乗せると、猛スピードで走り出しました。

青年の瞳が一瞬、きらりと輝くと、弾かれたように彼は映画館を飛び出しました。

 

 

彼が恋人と出逢ったのは、場末のダンスフロアでした。

彼女は、腰まである長い髪を振り乱して踊り、フロアの中でもひと際目立つ存在でした。

 

彼が一目で虜になったのは、言うまでもありません。

当時、彼は19歳、彼女は18歳…。

二人が恋仲になるのに、特に言葉はいりませんでした。

お互い、寂しい思いを抱えたものどうし、互いの表情や口ぶりから感じ合うものがあったのです。

 

映画館を飛び出した後、彼は、アルバイトに精を出すようになりました。

肉体労働を掛け持ちし、親方に怒鳴られても、ぐっと耐えて口答え一つしませんでした。

そして、ようやく手に入れたのが、念願の大型バイク。

月の美しい晩、彼は彼女を呼び出して、バイクの後部座席に乗せました。

エンジンをかけると、これまでの原付とは比べ物にならないぐらいの振動が、太ももに伝わってきます。

 

「こいつも、生き物なんだな」

彼がそう呟くと、「バイクが?」と彼女が怪訝な声で問いかけます。

 

「そうだよ、俺もこいつも、心臓をブルブル震わせてるんだ。お前にも伝わるだろ?

今がずーっと続いたら良いのにな、つまんねえ大人になんかなりたくねえよ」

「あたしも。ねえ、親も先生も、友達も、誰も追いかけられないぐらい、遠いとこに連れてって」

 

彼は、その言葉を合図に、猛スピードでバイクを走らせました。

ーこのまま、ジェームス・ディーンみたいに人生終わらせて、伝説になるのも悪くないかもな。

 

そんな妄想がふと、頭をよぎります。

その数か月後のことでした。

「…子どもが出来たみたい」

彼女の瞼は、涙で腫れて、唇が震えて真っ青でした。

「あたし、産むからね。あんたに捨てられたって、絶対、産むからね!」

いつも気怠げな彼女の姿からは、想像も出来ないような、必死の形相です。

 

ジリジリと蝉の声だけが、彼の痺れる頭の奥に響きます。

彼は大きく深呼吸すると、彼女のお腹にそっと手を当てました。

 

「俺、馬鹿だからさ。気の利いた台詞なんか何も言えないけど」

その言葉に、彼女は大きく目を見開いて、怯えたような顔になりました。

彼は彼女の目を見据えて言いました。

 

「俺は、今からお前のヒーローになる」

一瞬の間のあと、彼女が涙でぐしょぐしょになった顔で吹き出しました。

「やだ!何それ!」

 

笑いながら、彼女は涙を手の甲でぬぐいました。

「…でも、カッコいいよ。もっとあんたのこと、好きになった」

 

その言葉に、涙ぐむのは彼の番です。

言いたいことは山ほどあるのに、頭の中がぐるぐるして、言葉になりません。

みっともなく鼻をすすりながらも、彼の心は、彼女に囁き続けます。

 

「お前に会うまで肩で風を切って、その日その日を面白おかしく生きれたらいいや、なんて思ってたけどさ。

違うんだよ。

俺、わかっちまった。」

「生きるってのは、今、この一瞬一瞬の積み重ねなんだ。

俺は、月が空に溶けて、夜が明けるごとに、新しい俺に生まれ変わるんだ。

俺だけじゃない、お前だってそうだ。

 

例え地面がひび割れたって、太陽が落ちてきたって、何があっても、俺はお前を守る、って誓ったんだ。

そして、いつか生まれてくる子どもに言ってやるのさ。」

 

「お前は、父ちゃんと母ちゃんがたくさん試練を乗り越えたから、生まれてきたんだぞ」って。ー

 

 

一週間後、古びたアパートから、顎をさすりさすり、彼女に支えられるようにして出てきた彼の姿がありました。

金髪を真っ黒く染め直して、耳にはピアス穴がそのままになっています。

 

「聞いてねえぞ、お前の親父が元ボクサーだなんて!ああ、いてえ。ったく、結婚の挨拶に行くのも命がけだな」

「あれでもお父さん、手加減してくれたのよ?もし許してもらえなかったら、あんた、今頃、顎の骨が砕けてたわよ」

 

そういって、彼女は悪戯っぽい笑顔を浮かべました。

「こいつ!」と彼女の頭をくしゃくしゃに撫でると、彼らは、腕を組んで、人ごみの中に消えていきました。

 

彼らだけではなく、雑踏を歩く人々、誰もかれもが、あなたの知らない誰かにとっての小さなヒーローなのかもしれません。

そして、もちろん、あなたもヒーローなのです。

 

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まとめ

HERO(ヒーローになる時、それは今)の歌詞の意味を考察しました。

主人公の青年と恋人の少女。

愛し合う二人を引き裂こうとする強い抵抗が加わりますが、青年はその力を跳ね返し、彼女を引き寄せます。

青年は自分に向かって「ヒーロー」、彼女には「ヒロイン」と呼びかけ、今このときに二人は明日に向かって走り出します。

 

二人の未来に明るい光が輝きますように…。

発売されて半世紀近くが経ちますが、熱い想いが伝わってきます。

 

 

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