この記事は、布施明「シクラメンのかほり」の歌詞の意味を考察します。
「シクラメンのかほり」は、シンガーソングライター小椋佳によって作詞作曲されました。
1975年、布施明によって歌われたこの曲は、ミリオンセラーとなり、数ある音楽番組の栄冠をつかむことになりました。
それでは、「シクラメンのかほり」の歌詞の意味を読み解きましょう。
布施明「シクラメンのかほり」とはどんな曲
【シクラメンのかほり】
アーティスト:布施明
作詞:小椋佳
作曲:小椋佳
リリース: 1975年4月10日(キングレコード)
★チャート最高順位
週間1位(オリコン)、1975年度年間2位(オリコン)
「シクラメンのかほり」は当時まだ銀行マンだった小椋佳が作詞作曲して、1975年4月に布施明の楽曲として世に送り出されました。
すぐに人気となり、1975年のオリコンチャートは年間2位の大ヒットとなりました。
この曲で同年の第17回日本レコード大賞・大賞、FNS歌謡祭・グランプリなども受賞しています。
1975年度のオリコン・シングル売上枚数は87.8万枚、累計では105.2万枚のミリオンセラーとなりました。
布施明「シクラメンのかほり」の 歌詞の意味を考察
シクラメンが開花するのは、寒さ厳しい年の暮れの頃です。
頬を寄せれば、鈴蘭に似た、かすかに甘く品の良い香りが鼻をくすぐります。
和名は「篝火花(かがりびばな)」。
寂寞とした色味の無い季節に、赤々と燃えるような花びらは、確かに宵闇の篝火を彷彿させます。
シクラメンは花の色によって花言葉が違います。白は清純、薄紅は憧れ、そして紫色は、絆です。
この曲も、シクラメンの花言葉に乗せて、ある出逢いから恋が始まり、やがて深まる愛が終わりを告げるまでを、情緒豊かに語りかけています。
出逢った頃のあなたは、まだ何にも染まらぬ真綿の色。
まだ恋することの、喜びも苦悩も知らない、穢れの無い少女の色です。
春の訪れは、あなたの目にうつる景色を、青みがかった静謐な白から、ミルクのように穏やかで柔らかな乳白色に変えていきます。
緑色の固い蕾がほころぶように、私は、あなたの白磁のような頬に、薄くお揃いの紅を差しました。
夏の日のあなたは、可憐な乙女の薄紅色。あなたは唇に紅を差ことを覚えます。
緑眩しい木漏れ日の下、少しでも彼に綺麗だと思ってもらえるように。
緑の絨毯を子犬のように転がりあい、無邪気に戯れたあと、彼の唇の端には薄桃色の口紅の跡がつきました。
「私たちの愛の証になればいいわ。ずっと消えなければいいのに」
冗談交じりにそう言いかけて、あなたは息をのみました。
彼の瞳が濡れていたからです。
「どうして泣いてるの」
あなたの言葉に応える術はなく、彼はあなたを強く抱きしめ、涙にぬれた頬を押しつけることしかできませんでした。
暗く重い空の下、足早に歩くあなたの瞼は薄紫色。
淡いグレーがかったアイシャドウは、少女の頃よりほっそりした、あなたの面立ちによく映えます。
俯く彼を振り返らずに、あなたは独り言のように思いの丈を吐き出します。
「何故、あなたが泣いていたのか、今ならよく分かるの。冗談でいうことじゃ無かったわね。
あなたは私よりずっと大人だったのよ。あの頃の私は、寂しさの本当の辛さを知らなかった。
私がこれから先、傷つくことを予感して、あなたは私を哀れんだのね」
「哀れみじゃないよ。時間が君を連れ去ってしまうのを、少しでも引き止めたかっただけだ。それだけ愛していたんだよ」
彼の言葉には答えずに、あなたは押し黙ったまま、歩みを早めます。
交差点の角を曲がれば、二人は他人に戻ります。
今の私にできるのは、旅立つ彼らへの選別に、せめて花の香りを届けることだけです。
凍てつく孤独な長い夜に、少しでも彼らの心を照らす篝火(かがりび)になるように。
赤いシクラメンの花言葉は、嫉妬を意味するのだそうです。
この歌の中に、赤いシクラメンは出てきません。
秘すれば花、といいますが、確かに、この歌に嫉妬や諍(いさか)いといった生々しい感情は、相応しくないような気もします。
しかし、一方でシクラメンは毒を秘めた花でもあります。その名前からお見舞いの花としても適しません。
塊茎が心臓に似ていることから、古代では媚薬として使われたという言い伝えもあります。
植物にとっては永い眠りの季節である冬に花開くシクラメン。
清らかさと毒をあわせ持つ、決してありふれた花ではないからこそ、より聴き手にこの歌が深く印象付けられるのかもしれません。
折り重なる弦楽器の哀愁漂うしらべも、初冬の凛とした空気によく似合います。
歌手にとっては、歌う、というより「演じる」といったほうが良い曲かもしれません。
小椋の綴る詞は、人を愛することを知らなければ、一生素通りできた哀しみを、小刀のように突きつけてきます。
時の流れの残酷さを、まだ何も知らない子供の無邪気さに重ね合わせることで、抗うことのできない青年の無力感が際立ちます。
まとめ
布施明「シクラメンのかほり」の 歌詞の意味を考察しました。
布施の歌声は、歳を重ねるごとに、本来の持ち味である伸びやかな甘い声に加え、奥行きのある表現力が加わりました。
ミュージカルの本場、ブロードウェイの舞台に立ち、日々、役者として名作を演じ研鑽を積むことで、「歌う」ことのフィールドから飛び出すことができたのかも知れません。
布施の歌うのとは別に作詞作曲の小椋佳が歌う「シクラメンのかほり」も魅了的です。
朴訥としたなかにも胸が詰まるような寂しさで、私たちにしみじみと語りかけてきます。
「シクラメンのかほり」の 歌詞の登場する複数の色のシクラメン。
今では当たり前になっている青色のシクラメン(ブルーシクラメン)ですが、生まれたのは、ごく最近の2011年のことだそうです。
大切な人への冬の贈り物にシクラメンはいかがでしょうか。
【関連記事】
ザ・タイガース「花の首飾り」の歌詞の意味を考察!甘くメルヘンチックな名曲
久保田早紀「異邦人」の歌詞の意味を考察!シルクロードのテーマが副題!
日本ぶろぐ村