松田聖子「SWEET MEMORIES」の歌詞の意味を考察します。
この曲は、1983年8月に発売された松田聖子のシングル「ガラスの林檎」のB面に収められました。
B面といえどもコマーシャルソングにも起用されて人気に火が付きました。
そんな松田聖子「SWEET MEMORIES」の歌詞の意味を読み解いていきましょう。
松田聖子「SWEET MEMORIES」はどんな曲
【SWEET MEMORIES】
アーティスト:松田聖子
作詞:松本隆
作曲・編曲:大村雅朗
リリース:1983年8月1日( CBS・ソニー)
★チャート最高順位
ガラスの林檎/SWEET MEMORIES」としてのチャート最高順位
週間1位、1983年度年間7位(オリコン)
「SWEET MEMORIES」は、1983年8月に発売された松田聖子の14枚目のシングル「ガラスの林檎」のB面に収められました。
発売直後からA面「ガラスの林檎」のみならず、B面「SWEET MEMORIES」もサントリーの缶ビールのコマーシャルソングに採用されたこともあり、人気が高まりました。
そして、1983年10月に「ガラスの林檎」「SWEET MEMORIES」の両方をA面とする珍しい形で再発売されました。
このシングルの販売は85.7万枚(オリコン)と大ヒットになりました。
松田聖子「SWEET MEMORIES」の歌詞の意味を考察
「なつかしい痛み」
主人公の女性は、かつての恋人と再会し、胸の疼きを感じています。
思いがけずかつての恋人と再会したとき、瞬間的に蘇るものは何でしょう?
おそらく、懐かしい声、懐かしい匂い、懐かしい笑顔など、“相手がどんな人物であったか”という記憶であるパターンが多いのではないでしょうか。
しかしこの曲の主人公に最初に蘇ったのは、“相手がどんな人物であったか”という記憶ではなく、彼女自身の“胸の痛み”です。
それは、以前にも経験したことのある感覚です。
しばらく忘れていたその感覚は、特別な感情を伴っています。
自分の内側から蘇ってくる感情は、一瞬にして彼女の全身を包み込みます。
「痛み」というのはマイナスの感情ですが、対して「なつかしい」というのは、好意的な感情として用いられる表現です。
かつて慣れ親しんだ人や物事を思い出して、昔にもどったようで離れがたいというような意味合いがあります。
「なつかしい痛み」という最初のフレーズだけで、この恋愛の奥行きや円熟味を感じさせます。
楽しいだけの若い恋愛ではなく、酸いも甘いも噛み分けた大人の恋愛をしていたことがうかがえます。
彼女は、あの頃恋愛していた日々を懐かしみ、切なくも愛おしい気分になっているのです。
かつての恋人は彼女に尋ねます。
「今、幸せかい?」
彼女は、あの頃彼と過ごした時間ほど情熱的で満たされた日々を過ごしてはいません。
それでも彼女は、笑顔を作り答えます。
「とても幸せよ」
それは、彼との別れを乗り越えて、大人の女性として幸せになっている姿を見せたいという、切ない女心です。
そんな彼女の少しばかりの背伸びは、彼に気付かれてしまっているのでしょう。
心の隙にスッと入り込もうとするかつての恋人は、一枚上手です。
「キスしたらいけないわ」
それは、女性が生まれながらに持つ防衛本能かもしれません。
女性というのは、純粋に、そして無条件に自分を愛してくれる人の胸には躊躇なく飛び込んでいけるものです。
今彼に身を委ねれば、再び傷つくと彼女はわかっているのです。
彼女は、別れた後も長い間彼を忘れることができなかったようです。
ひとり涙に暮れる孤独な夜を何度も過ごしていました。
本当に大切なものは、失ってはじめて気付くものです。
そばにいるときは気付かなかったのに、離れてみてはじめて、かけがえのない存在だったことに気付くということは、大人なら誰でも経験しているのではないでしょうか?
そして、彼女の傷は時間が癒してくれました。
2番の冒頭の歌詞であるこの部分は英語詞になっています。
それにはどんな意図があるのでしょうか?
歌番組全盛期の1980年代は、テレビで歌われるのは1番のみということがほとんどでした。
2番はレコードを買った人だけが聞くことができる特別なものだったのです。
その部分を英語詞にすることで、主人公の感情をより深く推し量ることができ、大人の恋愛模様としての世界観が広がります。
また、日本語と比べ、英語は同じ文章量でもより多くの情報を伝えることができます。
例えば、2番の最初の歌詞である「Don’t kiss me baby」は、日本語詞では「キスしたらいけないわ」となっています。
「baby」という表現は直訳されていません。
この「baby」という表現は、「かわいい人」「愛しい人」などの意味合いを持ちます。
「Don’t kiss me baby」と英語詞にすることで、彼女の彼に対する心の内をうかがい知ることができます。
彼女は今もなお、彼のことを愛おしく思っています。
それでもそんな気持ちを抑え込もうとしているのです。
感情のままに身を任せれば、また傷つくことがわかっているから。
あの頃を振り返ってみれば、自分本位の恋愛だったのかもしれません。
お互いに傷つき、傷つけあったこともありました。
人は時に、思い出を美化してしまうものです。
そんな哀しい過去の記憶も、彼女にとっては過ぎ去った遠い思い出です。
彼との別れを乗り越え、ようやく美しい思い出として自分の心のメモリーに整理することができたのです。
彼と過ごした日々、彼の優しさは、失ってはじめてキラキラと輝き出し、そしてそれは今は「甘い記憶」として今彼女の胸の中にあります。
彼との恋愛は、既に終わったこと。
心は揺れながらも、やはりそれを繰り返すことを彼女は望んでいません。
思い出は美しいままで、宝物として持っていたい。
「SWEET MEMORIES」は、そんな大人の女性の切ない感情が伝わる名曲です。
まとめ
松田聖子「SWEET MEMORIES」の歌詞の意味を考察しました。
松田聖子と言えば、1980年代を代表するアイドルです。
デビュー時の瑞々しく愛らしい笑顔と甘い声、抜群の表現力で男女問わずファンを魅了しました。
当時流行った「聖子ちゃんカット」は社会現象にまでなったほどです。
そんな聖子ちゃんにとってこの「SWEET MEMORIES」は、これまでのイメージから脱皮した、大人の女性としての魅力が詰まった楽曲です。
この曲は、サントリービールとのコマーシャルタイアップ曲であり、当初クレジットの記載がなかったために、「あの切ない曲は誰が歌っているの?」と話題になりました。
それだけ大きなイメージチェンジだったのでしょう。
大人の魅力溢れる素敵な楽曲で筆者も大好きです。
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