この記事は、欧陽菲菲(オーヤン・フィーフィー)「ラヴ・イズ・オーヴァー」の歌詞の意味を考察します。
台湾出身の歌手である彼女のこの曲は「雨の御堂筋」などと並んで代表曲のひとつです。
それでは、欧陽菲菲「ラヴ・イズ・オーヴァー」の歌詞の意味を読み解いていきましよう。
欧陽菲菲「ラヴ・イズ・オーヴァー」はどんな曲
【ラヴ・イズ・オーヴァー】
アーティスト:欧陽菲菲
作詞・作曲:伊藤薫
リリース: 1979年7月1日( ポリドール・レコード)
★チャート最高順位
週間1位、1984年度年間18位(オリコン)
「ラヴ・イズ・オーヴァー」は、最初発表された時は、彼女のシングル「うわさのディスコ・クイーン」(1979年7月発売)のB面曲として収録されていました。
その後、この曲を気に入ったナイトクラブのママたちが歌うようになり、客たちの間で口コミが広まりました。
それを聞きつけた 欧陽菲菲の事務所の社長が、この曲をA面にしたシングルを改めて発売することを決め、翌年シングル曲として発売されました。
1984年度のオリコン年間ランキングでは18位、販売枚数は40.9万枚を記録しました。
欧陽菲菲「ラヴ・イズ・オーヴァー」の歌詞の意味を考察
この曲については、週刊現代の2022年2月に出された「熱討スタジアム」というコラムにて、作詞を含む曲の制作裏話が当事者たちによって詳細に語られています。
作詞・作曲の伊藤薫がそこで語られた内容を参考に考察を進めていきます。
この歌の主人公の女性は、数年前から年下の若い男性の恋人と同棲していました。
同棲といっても、家事などの生活のことから、経済的なことまで、全て女性が面倒を見ているので、男性はほとんどヒモに近い状態だったのです。
しかし、女性は男性のことを深く愛していました。
だから、この愛に満ちた幸せな生活に満足していたのです。
しかし、一緒に住み始めた頃はまだ、あどけない少年っぽさを残していた男性も、数年を経て、すっかり大人へと成長しました。
ふと、周囲を見渡せば、彼と同世代の若者はみんな、社会で苦労しながら働いているのです。
それなのに、自分はこのまま彼を甘えさせた状態にさせておいて良いものだろうか、と女性は考え始めます。
このままでは、彼は年上女に甘えることのみ覚えていくばかりで、生活力の無い駄目な人間になってしまうのではないか。
しかし、そんなことは許されません。
いくら恋人同士とはいえ、彼の人生は彼自身のものであり、女性のせいで堕落させては、彼の人生そのものを奪うことになり兼ねないのです。
だから、ここらで敢えて突き放し、冷たい社会に放り出した方が良いのかもしれない。そう女性は思います。
しかし、いざ別れようと思ってもなかなか決心がつきません。
“ああ、出来ることなら手放したくない。他の女に触れさせたくない。ずっと自分がこの人を独占していたい。でも……。”
女性は、そうして散々悩んだ挙句に心を鬼にして、彼との関係を終わらせることにしました。
そして、決意を固めて彼に、“自分たちの関係はここでおしまい。だから、この家を立ち去るように”と言い渡します。
この歌は、そんな彼女の彼との切ない絶縁宣言を歌った曲なのです。
最初は相手を諭すように冷静に話を進めていた女性も、本当は彼と別れたくないという想いがだんだん抑えきれなくなってきます。
その切ない女心を一番現した部分が、Aメロとサビの相手の呼称の違いだと、作詞を担当した伊藤自身が語っています。
そして、この呼称の変化こそが、この詞の一番のこだわりポイントだそうです。
“あなた”が”あんた”に変わることろですね。
このように、この歌からは、女性の葛藤や、年上女としての母性的愛情が感じられます。
しかし、この別れは本当に若い彼のためだけを思ってのことなのでしょうか。
年下の男性といっても、この歌の男女の場合、ほんの数歳の歳の差ではないと思われます。
少なくとも10歳、もしくはそれ以上の歳の差があるのではないでしょうか。
そんな年下男性と付き合っていると、女性には色々と不安が湧いてくるものです。
“今に、彼と同い年くらいのピチピチの若い女性に彼を奪われてしまうのではないか。そして、自分は惨めに捨てられてしまうのではないか。”
特に主人公の女性のように、男性を養うことが出来る程の財力と社会的地位を持っている人は、それなりの高いプライドを持っていることが多いものです。
しかし、年下の恋人が、若い女に取られた結果、捨てられるなんてことがあったら、そのプライドは傷つきます。
それを未然に防ぐには、自分から別れを切り出すしかありません。
ひょっとしたら、そんな想いもこの絶縁宣言の裏にあったのではないかと思われてならないのです。
いずれにしても、女性が悩み苦しみ抜いた末に切り出した別れを、彼は受け入れるべきです。
そして、今度はちゃんと自立して、自分の手で幸せを築いていって欲しいと思います。
まとめ
欧陽菲菲「ラヴ・イズ・オーヴァー」の歌詞の意味を考察しました。
主人公の女性と若い男性との年の離れた同棲中のカップルですが、男性は仕事をせずに生活のすべてを女性に頼り切りの様子。
女性は男性を愛するがゆえにその状態に満足しますが、この状態を続けることが彼の将来にとって本当に良いのだろうかを悩みます。
そして彼の将来のためには別れた方がよいという結論に至ります。
しかし、彼女は彼のことを深く愛しているがゆえに苦しみますが、「早く出てって」と告げます。
そうした主人公の女性の悶々とした葛藤を欧陽菲菲が気持ちを込めて歌うことにより多くの人々の心をとらえたのでしょう。
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