この記事は、上田正樹「悲しい色やね」の歌詞の意味を考察します。
1982年発売のこの曲は、心の奥底を揺さぶるような歌詞を渋いボーカルで届けてくれる素敵な名曲のひとつです。
それでは、上田正樹「悲しい色やね」の歌詞の意味を読み解いていきましよう。
上田正樹「悲しい色やね」はどんな曲
【悲しい色やね-OSAKA BAY BLUES-】
アーティスト:上田正樹
作詞: 康珍化
作曲:林哲司
リリース: 1982年10月21日( CBS・ソニー)
★チャート最高順位
週間5位、1983年度年間26位(オリコン)
1982年に発売された「悲しい色やね」は、上田正樹の最大のヒット曲です。
R&Bバンド、上田正樹とサウス・トゥ・サウス解散後、ソロデビューした彼ですが、なかなかヒット曲に出会えませんでした。
そこで、彼を担当していた楽曲ディレクターの関屋薫は、林哲司に作曲を依頼し、そして作詞家の康珍花に作詞を依頼。
そうして出来たこの曲は、発売直後の人気は今一つでしたが、関西地区の有線放送でリクエストされることが増え、翌年にはヒットチャート上位に食い込むまでになりました。
その結果、1983年度のオリコン・シングルチャートでは年間ランキング26位、売上枚数は34.8万枚を記録しました。
上田正樹「悲しい色やね」の歌詞の意味を考察
舞台は、夜の大阪湾のほとり。
一組のカップルがドライブデートの途中で、ぼんやりと風景を眺めています。
一見、何気ない普通の恋人たちのデートのように感じます。
実は、女性はこのデートを最後に相手の男性と別れる決意を固めていました。
その理由は決して、彼を嫌いになったからではありません。
むしろ、彼女は彼のことを今でも深く愛しています。
ただ、この男性は、身の丈に合わない非現実的な将来像を描くばかりで、実際のところ生活力も経済力も持ち合わせていませんでした。
今夜のドライブだって、彼女のマイカーで来たくらいです。
そんな彼とこの先も付き合い続け、結婚するとなるとどうしても不安が付きまといます。
それでも、彼のような人は、誰かが支えてあげないとダメになりそうで、彼女はどうしようか悩んでいました。
一方、近頃、表情を曇らせることの多い彼女を見て、男性は自分を嫌いになったのではと不安になったのか、彼女の気持ちを確認するような質問をしてきます。
彼女は、その質問に互いの想いのすれ違いと限界を感じ、ついに別れを決断します。
ただ、今の時点では、そのことをまだ彼に告げていません。
だから彼はきっと、いつもの楽しいデートのつもりでいるのでしょう。
それを考えるとまたいっそう辛くなります。
そんな複雑な思いで眺める夜の大阪湾は、いっそう暗く澱んで見えます。
“きっともう、こんなに強く誰かを愛することはないだろう”と考える彼女。
“せめて最後に強くきつく抱き締めて欲しい”と、そう願うのでした。
以上のように、この歌は、まだ相手のことが大好きだけど、その夜のデートを最後に、恋人の男性との別れを決意した女性の辛い心情を歌ったものだと思われます。
大阪湾の近くや関西弁を話す地域に住まう人々、そこにかつて住んでいた人々の心をぐっと掴み、それが曲のヒットに繋がったのでしょう。
一方で、この歌には、単なるご当地モノに留まらない魅力があると思います。
それを感じさせるのが、歌詞の中の女性の心の視点が転じて、自分以外の恋人たちや、この大きな都市に住む沢山の人々の生活に思いを馳せる部分です。
これは、そんな風に考えの焦点をずらさなければならない程、女性が苦しんでいることの現れだと思います。
この部分こそが、この歌の聴き手の心を惹きつけるポイントだとも考えられるのです。
それまで、この曲では、ずっと一人の女性の個人的な感情が書かれていました。
しかし、最後の部分で歌詞に俯瞰的要素が加わり、結果、この曲は、一気に聴き手の対象を大きく広げることになったのだと思います。
暗く澱んだ湾の水・・。
それは、実際の水の汚れではなく、そのほとりに住む人々の人生における悲喜こもごも全ての象徴です。
様々な色の絵の具を混ぜると最終的に黒っぽい色になりますね。
そして、そういうものを含んだ水というのは、人間が暮らす場所なら何処にでも存在します。
そこに、地域や時代を越えた人生の営みの普遍性が感じ取れ、この曲は、関西圏に縁のない人の心にも響くのだと思われます。
曲のラストのサビのリフレインは、女性の未練の現れです。
それは大阪湾の水面に生じる波紋のように、だんだんと静かに消えていきます。
この辺りがまた、曲の対象を「大阪」から、もっと遠い世界へと、それこそ波のように広げていくのに一役買っているような気がしてなりません。
まとめ
上田正樹「悲しい色やね」の歌詞の意味を考察しました。
主人公の女性と恋人である年下の男性。
お互いに愛し合っていますが、女性は将来のことを考えるとこのままの状態を続けるのが、二人の将来にとって本当に良いのかと疑問を持ちます。
その気持ちがだんだんと大きくなって、女性は恋人の男性に別れを切り出すのですが、辛い気持ちが次から次へとこみ上げてきます。
大阪は水の都とも呼ばれ、多くの川や水路があります。
歌詞の中でも川は「恋や夢のかけら みんな海に流してく」とあります。
主人公の女性も涙とともに心の苦しい想いを川に投げ出したのでしょう。
そうしたさまざまな人々の想いを川は海へと運びます。
母なる海はそうした想いを今日も浄化してくれていることでしょう。
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