この記事は小林麻美「雨音はショパンの調べ」の歌詞の意味を考察します。
「雨音はショパンの調べ」は松任谷由実の作詞、小林麻美の歌によって1984年にリリースされました。
エレガントで落ち着いた雰囲気が漂う名曲です。
それでは、小林麻美「雨音はショパンの調べ」の歌詞の意味をひも解いていきましょう。
小林麻美「雨音はショパンの調べ」はどんな曲
【雨音はショパンの調べ】
アーティスト:小林麻美
作詞: Gazebo(ガセボ)
作曲:P.Giombini(ピェールルイジ・ジョンビーニ )
日本語詞:松任谷由実
リリース: 1984年4月21日( CBS・ソニー)
★チャート最高順位
週間1 位 (オリコン)、1984年度年間12位(オリコン)
「雨音はショパンの調べ」は、1983年にリリースしたイタリアのシンガー、 ガセボ「アイ・ライク・ショパン」のカバー曲です。
原曲は大ヒットしてイタリアをはじめ、ドイツ、スイス、オーストリアでも最高チャート順位は1位を記録しています。
日本でもオリコン洋楽シングルチャートで1位となりました。
日本語歌詞は松任谷由実によるもので松任谷の歌詞の空気感と小林麻美の歌唱が相まって独自の世界を創り出しています。
小林麻美「雨音はショパンの調べ」の歌詞の意味を考察
モデルとしても活躍した小林麻美は、飾り気のない白いシャツとコットンパンツに、プラチナのピアスを合わせるような、エフォートレスなお洒落が様になる人でした。
エスプリの効いたものをこよなく愛する松任谷由美とは、まさに好相性だったと言えます。
この歌も、小林の透明感ある歌声が、軽やかに、瑞々しく香るオ-デトワレのように、いつまでも心地よい余韻を残します。
この曲のキーワードになるショパンは、19世紀ポーランドを代表する作曲家です。
39年という短い生涯に生み出された曲の数々は、まさに繊細にして可憐。
男装の麗人ジョルジュ・サンドとの悲恋も、名曲に華を添えました。
繰り返されるショパンというフレーズは、この曲の甘美なメロディラインに相応しいといえるでしょう。
それでは、まず、原曲の歌詞を意訳してみましょう。
『いつかショパンが好きだと君に話したね、あの感傷的な音色を思い出すよ。憂鬱な雨だって僕等を引き裂けはしない。
なのに君の瞳は、なぜこんなに濡れているの。僕はどうしたらいい?いつだって君は、眩しい青空のように晴れやかな顔をしていたのに』
曲の調べと同様に甘やかでロマンティックですが、直情的で、もう少し、ひねりが欲しいものです。
松任谷なら、どのように歌詞をつけるでしょうか。
お手並み拝見と行きましょう。
原曲の歌詞に忠実ではありませんが、小林の歌でもショパンは効果的に使われています。
歌詞にでてくる、窓ガラスを叩く雨音は、ショパンの代表曲「雨だれ」になぞらえた松任谷の遊び心ともいえましょう。
薄暗い空から降り注ぐ無数の音符は、ガラスの鍵盤を叩き、旋律を奏でます。
それは時に優しく、砕けやすいものに触れるかのように、時に激しく体の奥から揺さぶるように、変幻自在で予測がつきません。
それは、まるで彼女の背骨をなぞる細く固い、彼の指の様です。流麗なノクターンから情熱的なエチュードへと、息つく暇なく、奏でる指にこたえるように彼女の弦は震え、鳴り響きます。
「やめてよ」
いつか、その手を振り払った夜のように、彼女は俯き、耳をふさぎます。
ピアノは弾くものじゃない、って誰かが言ってたわ。静かで優しい音だって、指の先端まで力をこめて叩いてるのよ。
そうよ、あの人だって、私を愛していた頃は。
「やめてよ。」
彼女の呟きをよそに、雨は、非情に降りつづけます。
雨の日に限って、記憶の中の恋人が、優しく穏やかな顔をしているのはなぜでしょうか。
かつての嫉妬も、心のすれ違いも、雨粒がきれいに洗い流してくれるからかもしれません。
昔の恋人が忘れられない、新しい恋への一歩が踏み出せない、という人はこんなところに原因があるのかもしれません。
しかし、松任谷の歌詞に、過去の恋愛をいつまでも引きずる女性は、滅多に出てきません。
歌によっては、別れた男を翻弄するかのような振舞いをしたり、なかなかにしたたかです。
愛した記憶は消えなくても、彼女たちのこれからの人生にとっては、それだけのことです。
少なくとも、自分を卑下して殻にこもるようなことはありません。
今、膝をかかえている彼女も例外ではないでしょう。
感傷は、ある種の女性にとっては嗜好品のようなものです。
後悔という名のビターチョコレートをかみ砕けば、口いっぱいに芳醇なリキュールが広がり、束の間、酔わせてくれます。
新しい恋が訪れるまで、彼の面影に浸るのも、無理に切り離そうとして傷口を広げるよりは、賢いやりかたです。
失恋は、逃げずに向き合えば、深みのある美しい表情を作り、隣人への優しさやいたわりを育くむ栄養となります。
雨だれの響きは、彼女の宝石箱を開ける魔法の鍵です。
手のひらに思い出を乗せ、慈しむことができればもう大丈夫。
もう時計の針は、新しい出会いに向けて、動き出しています。
1980年代のファッションを振り返ると…
世相を反映してか、パワーショルダーに強い原色、ゴールドのアクセサリーといった、今の私たちから見たら、少し頑張り過ぎている印象を与えます。
そんな風潮の中、小林麻美の肩の力の抜けたシンプルなお洒落は、現代のこの街にも溶け込むような、洗練された美しさがあります。
まとめ
小林麻美「雨音はショパンの調べ」の 歌詞の意味を考察しました。
1991年に結婚、出産のため引退した小林ですが、2016年、20数年の時を超えて芸能界に復帰しました。
還暦を過ぎても当時の面影を失わず、マニッシュなスタイルを、気負わずさらりと着こなし、令和の新たなファッションアイコンとなっています。
デビューから一貫して、感受性の鋭い女性たちを牽引してきた、松任谷由実の活躍については、いわずもがなでしょう。
200年の時を超えて愛されるショパンの名曲になぞらえるなら、この歌の一番の魅力は時代の匂いを感じさせない、普遍的な魅力なのかもしれません。
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