堺正章「さらば恋人」の歌詞の意味を考察!悪いのは僕? | カモシカおやじの趣味ブログ

堺正章「さらば恋人」の歌詞の意味を考察!悪いのは僕?

昭和歌謡
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この記事は、堺正章「さらば恋人」の歌詞の意味を考察します。

1971年に発売されたこの曲は、ノスタルジックなメロディに乗せ、安寧の日々を捨てた青年の哀しみを情感豊かに歌いあげ、人気となりました。

それでは、堺正章「さらば恋人」の歌詞の意味を読み解きます。

 

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堺正章「さらば恋人」はどんな曲

【さらば恋人】

アーティスト:堺正章

作詞: 北山修

作曲: 筒美京平

リリース: 1971年5月1日 ( 日本コロムビア)

★チャート最高順位
週間2位、1971年度年間10位(オリコン)

この曲は1971年5月に元・スパイダース、堺正章のソロデビューシングルとして発売されました。

後に稀代のコメディアンとして一斉を風靡する堺正章。

彼のユーモア溢れるセンスには、いつもほんの少しの哀愁が、絶妙なスパイスとして効いています。

この曲も、恋人に別れを告げる青年の哀しみを見事に歌いあげています。

1971年度のオリコン・シングルチャートでは年間ランキング10位、売上枚数は52.8万枚を記録しました。

 

堺正章「さらば恋人」の歌詞の意味を考察

朝、日の出前。空がうっすら白む頃…。

青年は、子供のように、体を小さく丸めて眠る恋人の布団を、そっとかけ直してやりました。

彼女が身動き一つせず、静かな寝息をたてているのを確かめます。

そして、テーブルのうえに別れの手紙を置き、上着とリュックをひっかけて、足音を立てずに、静かに玄関のドアを閉めました。

 

青年は上着のポケットにかじかむ手を突っ込んだまま、背中を丸めて、シャッターの降りた表通りをとぼとぼと歩きます。

青春が美しいなんて、誰が言った。

後悔だらけで、泥臭くって、なにひとつ良い事なんかありゃしない。

 

寒さに鼻をすすり、顔を上げると、いつの間にか見慣れた三角屋根の駅舎が見えてきました。

 

始発まであと1時間、思い直すなら今のうちだぞ。

彼のなかで内なる声がささやきます。

 

あとは手紙を破り捨てて、何事もなかったような顔をしてりゃいいんだ。

全ては何も無かったことに。

青年は、寒さをふきとばすように、頭を左右に振って、否定します。

 

そして、決心したように、待合室の引き戸を開きます。

煙草を何本もふかし、祈るような思いで待った1時間後。

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東京行き、片道1枚

片道、と言いかけた瞬間、喉の奥にぐっと詰まるものがありました。

 

駅員は、それには気にも留めずに「東京行きやね、12000円」と呟き、切符を手渡します。

パンチで切符に穴を開けられた瞬間、鼻の奥がつんと痛くなりました。

 

遠くに聞こえる汽笛の音とともに、始発の発車を告げるアナウンスが始まります。

青年は、ホームに出て、冷たい空気を胸いっぱいに吸い込むと、自分に活を入れるように、しゃんと背筋を伸ばしました。

やがて、汽車がのっそりと、朝靄のなかから、黒光りする雄姿を現します。

客車のステップに足をかけると

これで、さよならだ

青年は、誰ともなしに、小声で呟きました。

 

俺は幸せになることには慣れてない。

目の前の幸せに手が届きそうになると、いつも背中を向けちまう。

子供の頃もそうだった。

泣いてねだった緑の風船、「決して手を離すな」とあれだけきつく母に言われていたのに。

 

風船は俺の手を離れて、遠い彼方へと飛んで行ってしまった。

追いかけて、追いかけて。

転んで、起き上がることも忘れて泣きじゃくって。

 

風船をねだったのは、あれが最初で最後だった。

幸せを追い求めるのをやめたのは、いったいいつからだろう。

男性とは身勝手なものです。

毎日が幸せだからこそ、それが恐ろしくなる瞬間があります。

怠惰の海に飲み込まれそうで、怖いのです。

 

平凡な毎日だから、それを壊したくなる瞬間があります。

自分には、まだやりたいことがあったはず。

冒険心が頭をもたげてくるのです。

 

一方、女性はいつも、別れを告げられた時、自分に至らぬところがあったのでないか、と自分を責めてしまいます。

至らぬところを直せば、彼の心は取り戻せると信じて。

 

しかし、男性が別れを切り出す理由は、女性が思いもつかないところにあるのです。

男性は皆、根無し草の旅人です。

愛する人は心の故郷。

故郷とは、遠くにありて思うもの。

もう、帰ることのできないふるさとだから、尊く美しいのです。

 

「必ず帰ってくる、待っててくれ」

その誓いが果たされたケースは、数えるほどしかありません。

 

女性も、何年後、何十年後に帰ってくるか分からない人を悠長に待てるほど、呑気では無いのです。

それでも男たちは皆、故郷では愛しいあの人が、帰りを今も待っている、と淡い期待を抱き続けます。

 

その姿は、聖母へ罪の許しを乞うているかのようです。

自分を待ち続ける、愛しい人というイコンがあるからこそ、荒波に耐えることもできるでしょう。

 

涙の海は、愛しい人に面と向かって別れの言葉さえ告げることもできなかった、己の弱さに対する青年のものでしょうか。

それとも、もう彼に会えないことを悟り、一人静かに泣いた、彼女の涙の集大成でしょうか。

男性と女性それぞれの立場で、その解釈も変わってくるのかもしれません。

 

青年は、胸ポケットをまさぐり、煙草がもう無い事に気づき、片手で頭をかきむしり、背中を背もたれに預けます。

 

 

俺より、もっといい男を見つけろよ。

こんな酷い男のことは、「嵐が通り過ぎただけよ」と忘れてくれ。

そして、うんと幸せになれ。

 

汽車は、乗客の不安と希望を乗せて、東へ、東へと煙を吐き出し、走り続けます。

許しを乞うことも、すでに諦めた男は、もう「必ず帰ってくるから、待っててくれ」とは言いません。

今はただ、ひたすら、かつて愛した人の幸せを願うのみ、なのです。

 

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まとめ

堺正章「さらば恋人」の歌詞の意味を考察しました。

ふるさとでの彼女との幸せな生活に別れを告げ、夜明けの街を駅へと向かう主人公の青年。

青年は内なる衝動にせかされ、幸せであることに耐えられなくなり、自分のやりたいことを探しに都会を目指します。

 

一方、青年は彼女に対する申し訳ないという気持ちも燻ります。

悪いのは自分だから、君は悪くないんだ…。

彼女との幸せな日常よりも自分の夢を優先してしまった青年。

ごめんなさい、でも許してください、という心の叫びが聞こえてくるようです。

 

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