この記事は、シャネルズ「ランナウェイ」の歌詞の意味を考察します。
1980年に発売されたこの曲は、オールディーズを彷彿とさせるメロディに、甘酸っぱい恋の想いを乗せ、人気となりました。
それでは、シャネルズ「ランナウェイ」の歌詞の意味を読み解きます。
シャネルズ「ランナウェイ」はどんな曲
【ランナウェイ】
アーティスト:シャネルズ
作詞:湯川れい子
作曲:井上忠夫
リリース:1980年2月25日(EPIC・ソニー)
★チャート最高順位
週間1位、1980年度年間13位(オリコン)
「ランナウェイ」は1980年2月にコーラスグループ、シャネルズ(後のラッツ&スター)のデビュー曲として発売されました。
この曲は、もともとはパイオニアのラジカセ『ランナウェイ』のCMソングです。
日本のお茶の間に洋楽を広めた先駆者である、湯川れい子が詞を書いています。
1980年度のオリコン・シングルチャートでは年間ランキング4位、売上枚数は97.5万枚のヒットを記録しました。
シャネルズ「ランナウェイ」の歌詞の意味を考察
場面はドライブインシアター。
オリオン座が瞬く夜空の下、ずらりと並んだ車の数々。
駐車場の向こうには巨大なスクリーンがそびえ、話題のラブストーリーが上映されています。
そのうちの1台、白いスポーツカーのなかで、恋人たちが、寒さに肩を寄せ合いながら、食い入るようにスクリーンを見つめていました。
彼らが場末のナイトクラブで出会ったのが三日前のこと。
暗い茶色の髪を肩でくるりと跳ねさせて、白く大きな襟のワンピースを身にまとった彼女と、彼は一目で恋に落ちました。
二人で仲良くジンジャーエールを飲み干して、一緒に頬を寄せ合い、ジルバを踊っていれば、まるでずっと昔からこうしていたような気分になれます。
でも、彼はこの幸せがずっと続くとは思っていません。
恋は、シャンパンの泡のように軽く、あっけなく弾けるもの。
だからこそ、恋の始まりには、気負いも何も要らないのです。
お互いのフィーリングがあえば、束の間の恋のドラマの始まりです。
しかし、彼らはそんな日々の繰り返しに、気怠い疲れも感じています。
こんな浮かれた日々がいつまでも続くわけが無い。
そんな予感もしています。
スクリーンの中の主人公は、陽気でほんの少し軽薄で、気取り屋です。
三日前の自分の姿を重ねる彼の心を、まるで代弁するかのように、ヒロインの耳元で甘く囁きました。
「僕たち二人だけで、どこか遠い所へ逃げようか。全部捨ててさ…」
ヒロインは、大きな青い瞳にわずかな期待と不安をこめて、彼に聞き返します。
「捨てるって何を。仕事?家族?それとも?」
「明日もだよ…。全部という全部、捨てちゃうんだ。心配しないで、僕が連れて行ってあげる」
ヒロインは主人公の目をじっと見つめると、こっくりと頷きました。
スクリーンの中の恋人たちは、手に手を取ってニューヨークの街を走り回ります。
「ふうん、いいわね。青春じゃん」
そう言って、無表情でポップコーンを頬張る彼女の手に、自分の手を重ねると、彼も彼女に囁きました。
「俺たちも逃げようか」
「あんな風に?」
「そう」
「馬鹿みたい」
彼女の冷めた声に、一瞬、鼻白み、彼は黙り込みました。
しかし、胸を擦り抜けた寂しさも、窓から吹き抜ける夜風とともに飛んでいったようです。
ーまあ、いいさ。
こいつが明日も俺のそばにいてくれる保証なんてない。
俺も明日、君のそばにいる確信は持てない。
俺たちの恋はいつも風まかせだ。
束縛しない、何の約束もない関係。
お互いに自由な大人で、孤独だからこそ、はじめて響き合うものもあります。
お金さえあれば、自由も愛さえも手に入る街、東京。
しかし、時折、彼らは溺れて息が詰まるような苦しみを感じるのです。
黒いマントを翻すと、私たちに牙を向き、爪を立てる獰猛な都会の姿…。
まるで不思議の国のアリスに出てくるような、意地悪なチェシャ猫のようです。
神出鬼没で複雑怪奇、私たちを翻弄しては嘲笑います。
それなのに魅力的で心底、嫌いになれない。
寧ろ、もっと奥深くまで知りたいと思わずにはいられなくなる。
そうこうしているうちに、私たちは忘れてはいけないものを見失ってしまうのです。
本当は、彼らは、どこまで行っても安寧の地が訪れないことは、分かっています。
大人になるということ、自立して生きるということは、子供の頃に思い描いていたような、決してカッコいい事ではありません。
孤独で、虚しくて、こんなはずじゃなかった、と後悔することの繰り返しです。
街を闊歩するキャリアウーマンたちが、こぞって唇をフューシャピンクで染めるように、華やかなライトアップに彩られたこの街も、早朝には化粧を落とした、疲れ切った顔を見せます。
しかし、全てからの逃避行が、ほんのつかの間の夢だとしても、彼らはそれにすがらなければ、心が擦り切れてしまうのです。
やがて狂乱のバブルが訪れ、その終焉とともに人々の夢と欲望を食べて膨らんだ魔都・東京は弾け散ります。
あの時の彼らは今、どこにいるのでしょうか。
もしかしたら、本当に私たちがまだ知らない、心落ち着ける場所を見つけたのかもしれません。
まとめ
シャネルズ「ランナウェイ」の歌詞の意味を考察しました。
ある日、恋に落ちた都会の若者のカップル。
互いに孤独で心が傷ついている二人。
彼は彼女と一緒の時間は楽しくても、都会の乾いた雰囲気に閉塞感をいだくようになります。
彼は、二人だけでどこか遠い所へ行こうよ、と彼女に持ち掛けます。
しかし、彼女からは期待した返事は…。
彼は、二人だけでどこか遠い所へ行こうよ、と繰り返します。
ここにいては駄目になってしまう。
彼女を連れて遠くに行きたい、自由になりたい…、という彼の気持ちがオールディーズ風の調べと共に心に伝わってきます。
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