この記事は、山本コウタローとウィークエンド「岬めぐり」の歌詞の意味を考察します。
1974年発売のこの曲は、失恋の傷を癒そうと彼女と行きたかった場所に出かけた男性の心情を歌ったものです。
それでは、山本コウタローとウィークエンド「岬めぐり」の歌詞の意味を読み解きましょう。
山本コウタローとウィークエンド「岬めぐり」はどんな曲
【岬めぐり】
アーティスト:山本コウタローとウィークエンド
作詞:山上路夫
作曲:山本厚太郎
リリース: 1974年6月1日( CBS・ソニー / Odyssay)
★チャート最高順位
週間5位、1974年度年間17位(オリコン)
1974年、シンガーソングライターの山本コウタローは、森一美と板垣秀雄の2人と組み、フォークグループ、山本コウタローとウィークエンドを結成しました。
「岬めぐり」は、そんな彼らのデビューシングルです。
作詞は山上路夫が、作曲は山本コウタロー自身が、本名の山本厚太郎の名で手掛けています。
1974年度のオリコン・シングルチャートでは年間ランキング17位、売上枚数は38.5万枚を記録しました。
山本コウタローとウィークエンド「岬めぐり」の歌詞の意味を考察
ある休日、一人の青年が海岸方面へ向かうバスに乗車します。
目的地は、とある「岬」。
そこは、かつて彼が付き合っていた女性と、“一緒にデートで行こうね”と言っていた場所でした。
しかし、地元から割と近くにある場所だったので、行こう行こうと思っているうちに、彼女との関係は悪化し、遂に別れることになってしまいます。
辛い別れからしばらく経ちますが、未だに彼女への想いを捨てきれずに苦しんでいる青年。
そこで、思い切ってその場所へ行けば、心に何らかの区切りがつくかもしれないと期待を抱き、この日帰り旅行を思いついたのです。
しかし、その場所は、絶景スポットとして有名な観光地でもあるため、休日の今日は、車内も混んでいます。
乗客は、家族連れや友達数人のグループ、中には恋人同士だと思われる自分と同世代の若者たちもいます。
自然と彼らの会話で賑やかになる車内。
彼は、そんな中で寂しさを感じつつ、窓外の景色を眺め続けます。
やがて、海岸沿いの道に出ると、目の前が一気に開けて、海辺の景色が見えて来ます。
その解放感に同乗者のうちの数人が歓声を上げます。
しかし、彼の心は、解放的な気分になれません。
むしろ、そのぽかりと開けた空間を前にして、彼女なしにこれからの自分はやっていけるだろうかと不安を感じている様子です。
また、岩場に打ち寄せては、弾ける白い波頭の勢いを見ては、彼女に対する自分の想いの強さについて考えを巡らしてしまいます。
”たとえ結果はどうなったとしても彼女に対してあの波のように激しくぶつかるべきであったもっと。“
しかし、もう彼の隣には、彼女はいません。それだけは、変えられぬ事実です。
揺れる車体に身を任せ、外の景色を眺め続ける彼は、やがて少しずつ覚悟を決めます。
“この辛さは、しばらくは消えることはないだろう。でも、明日からまた仕事が待っている。ならば、この辛さを心の奥に押し込んで、やっていくしかないではないか。”
歯を喰いしばり、決意を固めた彼は、やがて、家路へと向かいます。
若い男性が、失恋のショックと元・彼女への未練を引きずりながらも、心に区切りをつけるべく、あえて彼女と行くはずだった場所を訪れる様子。
それを描いたのが、この歌です。
フォークの曲調と男性コーラスのハーモニーが、海沿いを走る路線バスの小旅行ののどかさに見事にマッチしていて、聴いていて非常に心地良く感じます。
しかし、歌の主人公である男性の胸中はというと、少し違います。
心の区切りは一応ついたものの、その方法は、負の感情を無理矢理、心の奥底にしまい込むというもの。
これでは、我慢するのと同じなので、近いうちに心身のバランスを崩して不調に陥ってしまうのではないかと、心配になってきます。
確かに、最初の頃は苦しいでしょう。しかし、時間が経つにつれて、その度合いは少しずつ弱くなっていくはずです。
だから、彼は年月の経過に任せて、心の傷を風化させようと考えたのかもしれません。
ところで、彼はどうやって、そんなことを思いつくに至ったのでしょうか。
あくまで、推測ですが、それは、彼が日帰り旅行で眺めた海辺の風景に関係があると思われます。
海岸線というのは、風雨にさらされたり、海水による浸食を受けたりして、日々目には見えない単位で少しずつ削られ、姿を変えていきます。
つまり、この時、彼が眺めた風景も数十年後は違うものに変わってしまうのです。
彼は、海辺の風景を見ているうちに、そのことに気付いたのではないでしょうか。
或いは、同乗者の中に年配の夫婦がいて、実際にそのようなことを口にするのを耳にしたのかもしれません。
そのため、自分の今抱えている感情も、時の流れという自然に任せることにしたのでしょう。
このように時間の経過というのは、人の心に薬のような働きを成すことがあります。
彼の心の傷が、その薬によってゆっくりと癒されて、また心から笑えるようになる日が来ることを祈るばかりです。
まとめ
山本コウタローとウィークエンド「岬めぐり」の歌詞の意味を考察しました。
主人公の若い男性が分かれた元・彼女との失恋のショックと未練に対して、心の整理をしようとかつて一緒に行こうと思っていていけなかったある海岸の岬に一人、バス旅行に出かけます。
バスの中から岩場に打ち寄せては、弾ける波を見ているうちに彼は覚悟を決め、もう過ぎ去ったことを何度も反芻していてもどうにもならない。
辛い気持ちは心の奥に押し込み、前向きにやっていこうとの決心を固めます。
少し強がっているようにも思いますが、気持ちの落ち込みの最下点は過ぎて、そのエネルギーは徐々に上昇へと向かっているようです。
そのように感じられるところもこの曲が人気のある理由のひとつなのかも知れません。
「岬めぐり」は、山本コウタローがソロ時代に出した楽曲「走れコウタロー」(1970年発売)と共に、多くの人に長く愛される曲となりました。
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