この記事は、 ダ・カーポ「結婚するって本当ですか」の歌詞の意味を考察します。
1974年に発売されたこの曲は、やさしさにあふれる美しいハーモニーで人々の心をとらえ、人気となりました。
それでは、ダ・カーポ「結婚するって本当ですか」の歌詞の意味を読み解きます。
ダ・カーポ「結婚するって本当ですか」はどんな曲
【結婚するって本当ですか】
アーティスト:ダ・カーポ
作詞:久保田広子
作曲:榊原政敏
リリース: 1974年6月1日(日本コロムビア)
★チャート最高順位
週間8位、1974年度年間35位(オリコン)
「結婚するって本当ですか」は1974年6月に、久保田広子と榊原まさとしの男女デュオ『ダ・カーポ』の4枚目のシングルとしてリリースされました。
作詞はメンバーの久保田、作曲も同じく榊原が手がけています。
オリコンのシングル売上枚数は31.2万枚を記録し、彼らの最大のヒット曲となりました。
ダ・カーポ「結婚するって本当ですか」の歌詞の意味を考察
いつまでも胸を離れることのない、甘酸っぱい思い出との決別と、新たな旅立ちを描いたこの曲。
ダカーポの美しいハーモニーと相まって、まるで童話のような優しく可愛らしい世界観を作り出しています。しかし、それだけではありません。
季節は9月。
辺り一面を絨毯(じゅうたん)のように埋める赤いコスモスが、本格的な秋の訪れを教えてくれます。
花弁には、夜通し降り注いだ雨の雫が、玉となって輝いていました。
そんなコスモス畑の真ん中に、ぽつんとたたずむ、花と揃いの赤い屋根の小さな家が、主人公の暮らす家です。
錆びたブリキの郵便受けに入れられた封筒には、あの人らしい几帳面な字で、結婚の知らせがつづられていました。
深呼吸で心を落ち着かせ、淡々と目で追っていった先の最後の一文に、彼女の視線は、ついに止まり、動かなくなりました。
『いつまでも君の幸せを祈っています。さようなら』
その最後の一文を胸の中で繰り返しながら、彼女はふらふらと街に出てきました。
ーあたし、ちゃんとエプロンはずしてきたかしら。
ああ、よかった、はずしてる。
なにぶん、ぼーっとしてたんだもの…。
あの人があんな手紙、よこすから…。
いつも休日に訪れる、花屋のショーウィンドウには、秋バラが飾られていました。
ーそうだ、オレンジの薔薇を買おう。
『薔薇は華やかすぎて苦手だ』ってあの人は言っていたけれど、もうあの人は来ないもの。
何の気兼ねもいらないわ。
それでも、入口の赤い電話が気になります。
ーあの人、もしかしたら…。出てくれるかしら。
思い切って、ダイヤルをまわそうとしましたが、静かに受話器を置きました。
結局、花は買わずに、晴れ渡る青空の下、自分を元気づけるかのように、わざと明るくハミングしながら彼女は家路へと戻ります。
『あなたの幸せを祈ります。あなたが大好きだから。あなたの幸せを祈ります。さようなら』
家に着いたら手紙を書きましょう。
永遠に彼が読むことが無い、手紙を。
ここまで読んで、あなたは綺麗にまとまりすぎている、と思われるでしょうか。
しかし、歌詞を何度、読み返しても、彼女の素振りからは、嫉妬や恨みつらみといった生々しい感情は感じ取れません。
寧ろ、純粋で疑うことを知らない、彼女の人柄が引き立っているようです。
白いエプロンが似合う女性は、きっと彼女が思い描いていた理想の女性像だったのでしょう。
その姿からは、清潔感あふれる母親の姿を連想します。
幼かった彼女も、台所の母にまとわりついて離れなかった子供だったのかもしれません。
彼女を世間知らずだ、幼いままごとのような恋だ、と笑う人もいるかもしれません。
しかし、本当に彼女が幼ければ、怒りの丈を彼にぶつけていたでしょう。
「本当は、二股をかけていたんでしょう」と口汚く罵ったかもしれません。
もちろん、彼女の心のなかには、この歌詞には書かれていないやりきれなさがあったと思われます。
しかしそれは、純粋な寂しさであり、彼にぶつけるものでは無かったのです。
この半年間、『やりなおそう。ほんのボタンのかけ違いだもの、すぐ元の僕らに戻れるはずさ』
無口で照れ屋な彼が、口にできない思いを手紙に託してくれることを…。
何事もなかったかのように、また、この家に、いつもの笑顔で戻って来ることを願い、そして、そんな彼の胸に飛び込んでいきたかった気持ちは本当です。
しかし、この半年の間、彼女はその思いを小さな箱に仕舞い、何事も無かったかのように1日1日を過ごしてきました。
それが彼女なりのプライドであり、自ら品位を落として惨めになるような真似はしたくなかったのです。
「別れた人に結婚の知らせなんて、残酷だ」
そう言って怒る人も勿論いるでしょう。
しかし、彼女は思うのです。
ーあの人は、私だから教えてくれたのよ。
いくら全て忘れたふりをしたって、所詮は私の強がりだって、分かってるんだから。
冒頭に出てくる、『雨上がりの朝』というフレーズも、寂しさや悲しみを、涙とともに洗い流した、過去との決別とも取れます。
「彼のことは一生、忘れないわ。あんなに真剣に愛した人はいないもの」
しかし、実際は、その台詞にしがみついて、美しい思い出にしたいだけで、本当は、自分でも気づかぬうちに、すでに遠い過去の人になっていたりするのです。
机の上の写真立てが、別の誰かになるのも、そう遠い話ではないでしょう。
もしかしたら数年後には、可愛らしい子供と3人で写った写真が飾られているかもしれません。
まとめ
ダカーポ「結婚するって本当ですか」の歌詞の意味を考察しました。
ほのぼのと牧歌的な描写だけで終わらないところが、この歌の深さであり、末永く愛される理由のひとつなのでしょう。
澄んだ歌声に身を任せて、そのまま心地よく聞き流してしまった方も多いかもしれません。
じっくりと読み解くと歌詞の奥深さに改めて気づかされます。
ダカーポの二人、榊原まさよしと広子は、この歌のリリースから6年後、夫婦として結ばれ、今は、娘の麻理子とトリオとして音楽活動をされています。
縁とはまことに不思議なものです。
歌詞を通して、歌手や作曲家、作詞家の背景に思いを馳せてみるのも面白いかもしれません…。
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