この記事は、紙ふうせん「冬が来る前に」の歌詞の意味を考察します。
1977年に発売されたこの曲は、美しい曲調、歌詞・歌唱によりフォークデュオ・紙ふうせんの最大のヒット曲となりました。
それでは、紙ふうせん「冬が来る前に」の歌詞の意味を読み解きましよう。
紙ふうせん「冬が来る前に」はどんな曲
【冬が来る前に】
アーティスト:紙ふうせん
作詞:後藤悦治郎
作曲:浦野直
リリース: 1977年11月1日(CBSソニー)
★チャート最高順位
週間4位、1978年度年間27位(オリコン)
1974年、フォークグループ赤い鳥が解散し、メンバーは、幾つかのグループに分かれます。
紙ふうせんもその一つ。メンバーの平山泰代と後藤悦治郎の夫婦はヒット曲を生み出せませんでした。
そんな紙ふうせんの名を一躍全国レベルに知らしめることになった曲、それが1977年に発売した「冬が来る前に」です。
オリコンの1978年度年間シングル・ランキングでは27位、売上枚数は42.4万枚とヒットしました。
紙ふうせん「冬が来る前に」の歌詞の意味を考察
灼熱の日差しが照りつける暑い季節、海辺ではいくつもの恋が花を咲かせています。
しかし、この歌の主人公の女性は、そんな楽しいはずの季節の最中に、どういう訳か、恋人の男性と別れることになってしまいました。
その原因は定かではありませんが、彼女は別れた彼のことを忘れられず、悲しみの日々を送っていました。
やがて季節は移ろい、日焼けしていた皮膚も元の素肌に戻りました。
しかし、彼女の心の傷は癒えないままです。
気温も涼しくなってきて、空気の中にはメランコリーな雰囲気が漂い始め、それが余計に彼女の心の傷の痛みを刺激します。
ひりひりと痛む胸に手を当て、その辛さに顔をしかめる女性。
やがて、徐々に不安と焦りが出始めます。
“どうしよう、このままどんどん空気が冷えて、寒くなってしまったら…。
彼の優しい温もりも無しに、凍える季節を、無事に過ごすことが出来るかしら。”
そんな彼女の足が向かう先は、彼との楽しい記憶が残る場所ばかり。
“こうやって思い出のある場所を訪ねていれば、もしかしたら彼と再会出来るかも。”
しかし、その淡い期待は叶うことなく、虚しさだけが募ります。
そして、気付けばもう、木々の葉も落ちて、彼女が恐れる寂しい季節は目の前に迫っています。
“出来ることなら、あなたと最初、出会うところからやり直したい。そうしたら、こんな不安や淋しさから解放されるのに。”
彼女は叶わぬと知りつつも、そう願ってしまうのでした。
以上のように、この歌は、別れた恋人を忘れられなくて苦悩するあまり、再び彼との恋を最初からやり直したいと願う、女性の辛い心境を描いた歌だと考えられます。
女性が来るべき凍える季節を恐れているところを見ると、彼女は元恋人と、或る程度の期間付き合っていたことが分かります。
つまり、彼女は彼がいれば、寒い季節でも心は温かく過ごせることを知っているのです。
クリスマスや年末年始、バレンタインデーなど、楽しいイベントを、愛する彼と共に過ごした記憶もその胸に去来しているのでしょう。
だからこそ、怖いのです。
この先、独りでそんな時期を過ごさなくてはいけないことが。
別れた彼にまだ想いが残る彼女の心は、絶望の闇に包まれています。
この状態で、これからの季節を迎えるのは少々危険に思われます。
日照時間が短くなる「冬」という季節は、うつ病を発しやすい季節です。
また、心が寂しい状態だと、それがストレスとなって、体の冷えも誘発します。
まして若い女性ですと、既に冷え性に悩んでいる可能性もあり、それがこの失恋を機に、ますます悪化してしまうかもしれません。
せめて、新しい恋を見つけるとまではいかなくても、何か気晴らしになるようなことを見つけられれば良いのですが、歌詞の中にはその気配は感じられません。
一方で、まだ彼女の心がかろうじて無事な状態を保っていることが伺える部分があります。
それは、歌詞の中に見られる色彩、またはそれを感じさせる言葉です。
絶望も極地に達すると、人間の目は色彩すら感じられなくなると言います。
だから、彼女はまだ大丈夫と言えそうです。
彼女が踏み歩く木々から落ちた色あせた葉は、過ぎ去った恋の記憶の象徴とも言えます。
しかし、どんなに願っても時間は巻き戻りません。
ならば、彼女はそれらを見るのではなく、頭上を見上げるべきです。
葉を落とした木々の枝先には、次の春に芽吹くための新芽がちゃんと付いています。
中には花芽を付けた木もあるでしょう。
これらの植物の強い生命力は、時にそれを見つめる人間に元気を与えてくれます。
彼女も早く、その存在に気付いてくれると良いのですが…。
そうすれば、厳しい「冬」も乗り越えることが出来るでしょう。
まとめ
紙ふうせん「冬が来る前に」の歌詞の意味を考察しました。
主人公の女性が別れた恋人のことを忘れられずに苦悩してしまう内容でした。
多くの方が経験するであろう青春時代の恋の苦悩を素直に歌い上げる内容は、しみじみとした味わいがあり、昔も今も多くの共感を呼ぶのも分かると思いました。
歌詞の言葉も美しく、その中に青春のひとコマが凝縮されているようで聴き終わった後も余韻が残りました。
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