この記事は、キャンディーズ「微笑みがえし」の歌詞の意味を時代背景を含めて考察します。
1978年に発売されたこの曲は、彼女達が解散を決意し、最後のシングルとなった集大成の曲です。
それでは、キャンディーズ「微笑みがえし」の歌詞の意味を読み解きましょう。
キャンディーズ「微笑みがえし」はどんな曲?
【微笑がえし】
アーティスト:キャンディーズ
作詞:阿木燿子、作曲:穂口雄右
リリース:1978年2月25日(CBSソニー)
★チャート最高順位
週間1位、1978年度年間5位(オリコン)
「微笑みがえし」は1978年2月に発売されたキャンディーズの活動期間内の最後のシングルです。
最後の楽曲のため、これまでのヒットしたシングルタイトルや歌詞が散りばめられています。
作詞家・阿木燿子の彼女たちへの粋なはからいが感じられます。
そして別れを哀しい言葉ではなく、旅たちという前向きな言葉で綴っています。
解散後も人気は続き、1978年度のオリコン・シングルチャートでは年間ランキング5位、販売枚数は82.9万枚を記録しました。
キャンディーズ 「微笑みがえし」の歌詞の意味を考察!
「微笑みがえし」の歌詞は、若いカップルが同棲を解消して新たに別の道を歩き出すというストーリーです。
哀しい別れではなく、お互いに納得して新たに別々の道を歩むものです。
この曲は、キャンディーズのヒット曲のタイトル“春一番”、その名前から始まります。
春は出会いと別れの季節、春一番が吹く頃に多くの人は転機を迎えます。
きっと歌詞に出てくる2人の同棲は、少し年上の彼女の部屋に年下の彼氏が転がり込んだものなのでしょう。
しかし、2人は別れを選択しました。
彼らが別々の道を進む理由は春になる少し前、彼の生活に何か変化があったのでしょう。
就職か転勤か?
少し年上の彼女にも仕事や生活の中で何か事情が生じたのかもしれません。
もしくは一緒に暮らしてみて何か現実的な“違い”を見つけてしまったとも考えられます。
引越し返しが済まないうちに、という言葉から彼がこの部屋に住み始めてからそれほど時間は経過していない様子。
引越しのお祝い返しのタイミングは、頂いてから長くても1ヵ月程度です。
なのに「またですね」という事は1~2か月程度の同棲生活?
後半の「引越し返しは別々ね」ということは、2人共この想い出の部屋を出て行くのです。
2人で生活するという未来は予想外の展開でゲームオーバー。
引越しのために家具を移動すると畳が若く緑色だったり、天井には、なんとススが!
ススとは、マキやストーブなどを焚くことで有機物が不完全燃焼を起こし炭素の微粒子などが天井などに溜まる埃です。
当時、冬はエアコンや床暖房ではなくストーブを利用するのが一般的だったのでススが溜まることも十分あり得ます。
また、タンスの陰から無くしたと思ったトランプが見つかります。
出てきたカードは、“ハートのエース”。
トランプ占いにおいて、ハートのエースはとても強い幸運のカード。
究極の愛、多くの人と喜びを分かち合う、人の助けを得る、という意味があります。
2人で歩いた道はきっと多くの人に支えられ喜びを分かち合えた時間だったのでしょう。
また、別れ際にこのカードが偶然見つかった事も未来を「吉」と予感させてくれます。
後半の“優しい悪魔”とは彼のこと。
「住み慣れた部屋」とは彼と生活したこの部屋。
笑ったり泣いたり喜び合い、喧嘩をしたり、困り困らせられた彼との日々。
良きも悪しきもたくさんの思い出が詰まった、この居心地の良い部屋にはもう留まることはできません。
シャツで顔を拭く彼、ススだらけの彼、涙が出る程可笑しいと思える行動とは言い難いですが…。
何年経っても“年下の男の子”である彼を最後まで笑顔で背中を押してあげようとする少しお姉さん的な彼女のいじらしさ。
そして彼女の別れるまでの苦悩や辛さを乗り越え決断した清々しさを感じさせます。
最後に2人で部屋の扉を閉めて鍵をかけ、それぞれの道を歩いて行きます。
“優しい悪魔”(=彼)はなんと!鍵も満足にかけられないのか?
と突っ込みたくなりますが、これには彼の心情が感じ取れます。
終始チャラけているようで、本当は彼もとても辛いのでしょう…。
お互いが“笑顔で別れよう!”
悲恋ではなく、前向きな別れであると。
「あの三叉路で」という言葉には1本は今まで一緒に歩いた2人の道、そして残りの2本は彼と彼女それぞれが進む道。
分岐点で「軽く」手を振ります。
あくまでも哀しい別れではなく、未来へ進むために歩いて行くのです。
人生にはそんな別れもあるものです。
“1.2.3”と3つ数えたら、詞の中の主人公の彼と彼女は…違う道を進んで行きます。
“1.2.3”は勇気と幸運のおまじないです。
これは終わりでなく始まりの物語。
涙ではなく“微笑み”にしてすべてに感謝を伝えます。
キャンディーズの3人もこの曲と共に新たな出発しました。
「お別れなんですね」「歩いて行くんですね」は彼女たちの感謝と決意の心の言葉でもあったのかもしれません。
この曲には、キャンディーズの集大成となる最後のシングルにふさわしく、これまでのヒット曲の歌詞やモチーフが使われています。
タイトルは、「春一番」「わな」「ハートのエースが出てこない」「年下の男の子」「優しい悪魔」「アン・ドゥ・トロワ」など。
多くのタイトルを歌詞に取り入れる事でキャンディーズの短くも華々しい歴史が語られています。
(阿木燿子さん…さすがですね!)
キャンディーズ「微笑みがえし」の流行った1978年とは?
この年は政治や世界情勢にも多くの出来事がありました。
国内の各政党に様々な動きがあり、世界では紛争やクーデターと暗いニュースから平和条約や友好条約などが締結など…。
今の時代の基盤がどんどん出来上がった時代です。
日本でこの頃の流行といえば「竹の子族」。
若い方でも名前を聞いたことがあるのではないでしょうか?
竹の子を掘る人達ではありませんよ!
原宿の歩行者天国に派手な衣装に身を包んだ若者が集まり、ラジカセでディスコサウンドを流して踊り続けるという社会現象です。
最初は首都圏の中高生たちが中心でしたが…。
最盛期には地方からやってくる若者もいて、原宿の歩行者天国には2000人以上もの若者が集まりました。
歩行者天国がない時は、原宿駅を中心に代々木公園から渋谷方向に竹の子族の若者たちが踊り続けていました。
この竹の子族の名前の由来は諸説ありますが…。
1978年に原宿でオープンした「ブティック たけのこ」の人気がきっかけとか。
1970年代のストリートパフォーマンスの代表です。
キャンディーズとは?
キャンディーズとは、伊藤蘭(ラン)、藤村美樹(ミキ)、田中好子(スー)の3人は東京音楽学院でアイドルを目指すスクールメイツ出身です。
3人はNHKの音楽番組のマスコットガールに抜擢され、その後に音楽プロデューサーの目に止まり1973年「あなたに夢中」でレコードデビュー。
それ以前から「8時だヨ!全員集合」などバラエティ番組に多数レギュラー出演していました。
しかし、デビュー当初はそれほど大きなヒットにはなりませんでした。
その後1975年5枚目のシングル「年下の男の子」がブレイク!そこから快進撃が始まります。
1986年「春一番」、「やさしい悪魔」など次々とヒットを飛ばしますが…。
1977年野外コンサートで突然の解散宣言。
涙ながらに「普通の女の子に戻りたい!」と放った言葉は流行語にもなりました。
1978年4月後楽園球場での解散コンサート。
ラストシングルの「微笑みがえし」は彼女たちと共に伝説となりました。
多くのヒット曲に恵まれながら4年半という意外と短いアイドル人生。
その後、結局…普通の女の子には戻れませんでしたが…。
まとめ
キャンディーズ「微笑みがえし」の歌詞の意味などを時代背景を含めて考察しました。
人々に素敵な歌を届けてくれた1970年代の偉大なアイドルグループのキャンディーズ。
今ではもう、どんなに望んでもキャンディーズの再結成を見ることはできません。
2011年、スーこと田中好子さんは長い闘病の末、家族同様だったランとミキにも看取られ帰らぬ人となりました。
解散後、それぞれ歌手、女優として活動はしましたが、一度も再結成はされませんでした。
私生活では3人はずっと仲が良く時々集まっていたそうです。
彼女たちの曲は昭和の歌謡史に残る名曲です。
是非とも、一度動画を観られてはいかがでしょうか?
とても40年以上の時が経過していると思えないほど、キラキラと輝きとても新鮮で春の旅立ちにピッタリの1曲です。
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