この記事は、Wink「涙をみせないで Boys Don’t Cry」の歌詞の意味を考察します。
鈴木早智子と相田翔子の二人組アイドルユニットのWink。1980年代後半から19990年代中盤にかけて多くのヒット曲を放ちました。
それでは、Wink「涙をみせないで Boys Don’t Cry」の歌詞の意味を読み解きましょう。
Wink「涙をみせないで Boys Don’t Cry」はどんな曲
【涙をみせないで Boys Don’t Cry】
アーティスト:Wink
作詞・作曲:Matjaž Kosi
日本語詞:及川眠子
編曲:船山基紀
リリース: 1989年3月16日(ポリスター)
★チャート最高順位
週間1位、1989年度年間10位(オリコン)
1987年、ユーゴスラビア出身のムーラン・ルージュという音楽ユニットが発表した「Boys Don’t Cry」。
この曲は、“どうして男の子は、涙を見せないの?どうして本音を隠したがるの?”といった女性の心情を明るく歌い上げたダンスナンバーです。
世界的にヒットし、多くのミュージシャンによってカバーされ、愛されました。
日本でも、Winkがカバーすることになり、1989年「涙をみせないで Boys Don’t Cry」というタイトルで発売されることになりました。
Winkにより歌われたこの曲は1989年度のオリコンのシングルチャートでは年間第10位、販売枚数は52.3万枚のヒットとなりました。
Wink「涙をみせないで Boys Don’t Cry」の歌詞の意味を考察
「涙をみせないで Boys Don’t Cry」の曲は、日本語版に訳すにあたって訳詞を担当した及川眠子さんは、原曲に色々と手を加えています。
そんな及川さんの訳詞に焦点を当てて考察していきましょう。
舞台は、夜の海辺。空には星がいっぱいに散らばって、まさに「映画のような」ロマンチックムードに満ちています。
浜辺に沿った道路の路肩には、一台の車が停まっていて、そこには一組の男女のカップルが乗っています。
こんなに素敵な夜だから、さぞや熱いデートを楽しんでいるのかと思いきや、男性が唐突に別れを告げます。
それは、あまりに「軽く」、呆気ないものでした。
女性は動揺し悲しみがこみ上げるものの、それを一切悟られまいと、「ルージュ直すふり」して横を向きました。
別れを告げた男性は、早々に彼女の車を降りて歩き去り、彼女は、その姿を「バックミラー」越しに見つめています。
クールに「かっこつけて」男性の別れの言葉を受け入れたものの、彼女はまだ彼を強く想っています。
しかし、もう二人の関係は戻らないので、彼女の心に悲しみや寂しさが込み上げます。
それと共に疑問と不満が出てきます。
“私たち、あんなに一緒に楽しく過ごしていたじゃない。それなのに何なの?
あのあっさりした別れの言葉。
それに何?全然ちっとも寂しそうだったり悲しそうだったりする顔も見せないなんて……。
結局、あなたの私への想いってその程度のものだったの?”
この疑問と不満は、原曲の歌詞にも見出せるものです。
しかし、Winkバージョンでは、切なさや悲しさの方が強調されています。
それが最もよく表れているのが、サビの「Sick-sick-sick」の部分です。
実は原曲では、この部分の歌詞は「Hi hi hi」とただ呼びかけるだけの意味の言葉なのですが、それを大胆に“Sick”に変えてしまったのです。
(この場合のsickは“病気な”という意味ではなく、“恋しい”という意味です。
ホームシックという言葉がありますが、あのシックがまさにこの意味でのsickに当たります。)
この「Sick」という言葉を用いることで、同じような発音のショックという言葉や、しゃくりあげて泣く時のシックシックという擬音語を連想させ…
女性のこの時の心情を的確に表現することに成功しています。
なんともウィットに富んでいますね。
そもそも、夜の海辺の男女の別れというシチュエーションも日本オリジナルの設定です。
原曲は、そこまで具体的に描いていません。
更に面白いと思うのは、この女性、「Boys don’t cry」と言っていながら、自分だって彼の前では涙を見せていないのです。
ちなみに「My love 胸をつたう涙 止めて」という歌詞があります。
この場合の胸はイコール心で、つまり心のみが悲しくて泣いているのであって、実際の涙が溢れそうになると、彼女はそれをメイク直しのふりをして誤魔化してしまうのです。
そもそも何故、彼女はここまでクールに振る舞う必要があったのでしょうか。
これはあくまで個人的見解ですが、この歌のカップルは実は、女性の方がいくらか年上なのだと思います。
それは、女性所有の車でデートしていることからも推測することが出来ます。
だから、彼女は年上の女として、彼にはある程度のプライドを持って接していたのでしょう。
おそらく、この恋愛、彼の方は少し年上の美しい女性に興味を抱いて付き合ってみただけの軽いものだったのかもしれません。
しかし、女性の方は彼にぞっこんになってしまったようです。
いやはや、恋愛とは難しいものですね。
だけどこの女性、一見クールを装っていますが、実は非常に乙女な一面も持っています。
このギャップも日本オリジナルで、人間の心の多面的要素を見るようで面白く感じます。
このようにムーラン・ルージュの「Boys Don’t Cry」は、日本語版になると、幾つもの大胆なアレンジや工夫が施され、原曲とは違った独自の魅力を放っています。
いや、これはむしろもう、原曲を越えたと言えるのではないでしょうか。
まとめ
Wink「涙をみせないで Boys Don’t Cry」の歌詞の意味を考察しました。
ムーラン・ルージュの「Boys Don’t Cry」は、作詞家の及川眠子さんにより新たな解釈がなされて独自の輝きを得ました。
まったくもって、及川眠子さん、恐るべしです。
彼女は、「淋しい熱帯魚」「愛が止まらない」などWinkの他の歌や「東京(やしきたかじんの曲)」などの作詞も手掛けています。
そして、更にあの有名なアニメソング「残酷な天使のテーゼ」の作詞も手掛けています。
大人気アニメ新世紀エヴァンゲリオンの主題歌です。
このような華々しい実績から見ても、彼女がいかに優れた作詞家であるか分かるますね。
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