この記事は、ロス・インディオス&シルヴィア「別れても好きな人」の歌詞の意味を考察します。
デュエットソングの定番であるこの曲はムーディな大人の歌謡曲として今でも人気です。
そんな、ロス・インディオス&シルヴィア「別れても好きな人」の歌詞の意味を読み解きます。
ロス・インディオス&シルヴィア「別れても好きな人」はどんな曲
アーティスト:ロス・インディオス&シルヴィア
作詞・作曲:佐々木勉
リリース: 1979年9月21日(ポリドール)
★チャート最高順位
週間4位、1980年度年間8位(オリコン)
ロス・インディオスは1962年に結成されたラテン音楽を中心に活動するムード歌謡の音楽バンドです。
シルヴィアは日本人の女性歌手で、ロス・インディオスの初代女性ボーカルとして加わりました。
ロス・インディオス&シルヴィアの「別れても好きな人」は1979年9月にシングル発売。
この曲は元々、1969年6月に松平ケメ子が歌ったものが最初です。
その後、グループ・サウンズのパープル・シャドウズが続き、ロス・インディオス&シルヴィアは3番目となりました。
そしてロス・インディオス&シルヴィアの「別れても好きな人」は多くの人々の人気を集め、発売翌年の1980年度のオリコン・シングルチャートの年間ランキングでは8位、売上枚数は76.9万枚を記録するヒットとなりました。
ロス・インディオス&シルヴィア「別れても好きな人」歌詞の意味を考察
ある夜、偶然、昔の恋人と再会した。
そこは二人の恋が終わった場所。
そして、あの時と同じように雨が降っている。
そんなドラマティックな歌い出しから始まる「別れても好きな人」。
曲調や歌詞の内容から、この歌に登場する男女は、それ程若くない成熟した大人であることが想像出来ます。
実年齢でいえば、30代後半から40代前半くらいでしょうか。
とすれば、この二人が実際に交際していたのは20代半ば頃。つまり十数年ぶりの再会ということになります。
「別れても好きな人」というタイトルにあるように二人には、若い時、互いに強く愛し合っていながら、何らかの深い事情があって別れざるを得なかったという悲しい過去があります。
別れた直後は二人共、とても苦しい思いをしたことでしょう。
その心の痛みを抱えたまま、二人は別々の人生を歩みます。
日常の忙しさと年月の経過によって、別れた直後の激しい心の傷を少しずつ癒していったのでしょう。
しかし「やっぱり忘れられない」と歌詞にあるように、心の底には若き日の恋が埋火のように常にあり続けていました。
そうやって十数年の月日を過ごしてきた上での再会なのです。
この思わぬ再会で昔の恋心が再燃し、再び二人は付き合うのかと、この歌を初めて聴く方は妙にハラハラした気持ちを味わうかもしれません。
しかし、この歌の二人は違います。
二人はまず、渋谷から程近い原宿へと向かいます。
雨は降っているけど、さほど強い降りではないので傘をささなくても歩けそうです。
もし仮に傘をさして歩くとしても、一つの傘で相合傘する訳にはいきません。
再会したのはいいけど、もし相手が他の異性と結婚していたらなんて考えるとそれは出来ないことです。
かといって、それぞれが傘をさして歩くのもためらわれます。
せっかくの十数年ぶりの再会です。
一つ傘とはいかないけれど、この貴重な時間を楽しみたい。
そう思っているから、そんなに雨量も多くないし、このまま少し濡れながらも傘をささずに歩こうとなるのです。
さて、原宿に着いた二人は、だんだん打ち解けてきたのか、次は赤坂へと歩を進めることにしました。
この歌には、「赤坂」「乃木坂」「一ツ木通り」と赤坂周辺の地名が三つも出てきます。
そして、二人は赤坂の地で食事も共にしています。
このことから、若い頃の二人は、赤坂エリアで頻繁にデートしていたことが推測されます。
そんな場所ですから歩けば自然と昔の記憶もよみがえって「思い出」を「語って」しまいます。
そして、食事の席。テーブルを挟んで向かい合って座り、改めて相手を見つめる二人。
それぞれは改めて思います。”この人のこと、やっぱり好きだなあ・・”と。
年齢も少し重ねて容姿も変わったけど、昔と変わらない優しさを互いに見出している。
特に女性の方は、”ああ、そんな「やさしい言葉」をかけられたら、私は「弱いから」この気持ちに流されてしまうじゃない”とさえ感じています。
けれども、彼らは節度ある大人ですから、その感情に身を任せず、ちゃんと分別をわきまえています。
だから「だめよ」という制止の言葉が出てくるのです。
この言葉で二人は、一線を越えようとは最初から考えていないことが分かります。
それでも食事を終えて、このまま別れるにはまだ名残惜しいし、時間的余裕もありました。
そこで二人は、高輪方面へ歩いていくことに決めます。目的は、東京タワーを眺めるため。
夜闇に浮かぶ東京タワーの放つ光は、美しいですよね。
ましてこの夜は雨が降っています。
空気は水を含んで、タワーの光もその分滲んでより美しく見えたことでしょう。
なんともロマンチックな光景です。
時間的にも二人が共にいられるのはあとわずか。
自然と言葉数が減ってしまうので、「ちょっぴり寂しい乃木坂」になってしまいました。
やがて、赤坂エリアに戻り、昔よく歩いた「いつもの一ツ木通り」まで来ました。
今夜の二人はこの場所を別れの場所にすることにします。
空からは相変わらず雨が降っています。
「雨の夜」は二人にとって別れには欠かせないシチュエーションなのです。
おそらく、この時の二人は、若い時とは違い、笑顔で別れることが出来たでしょう。
そして、二人はそれぞれ傘をさし、違う方向へと一人で歩き去っていきます。
その胸の内に、“ああ、やっぱりあの人のこと、好きだな”という想いを抱えたままで・・。
今後、二人が再び会うことはなかったと思います。
でも、この夜の再会で、悲しかったあの若き日の別れが、一夜の珠玉の思い出に更新されました。
これ程素晴らしいことはなく、もうそれだけで二人の心はかなり満たされたのではないでしょうか。
こうして考えてみると「別れても好きな人」は、なんとも味わい深い大人の恋の歌であることが分かります。
それはまるで、程良く寝かせて熟成させた上品なワインのよう。
この歌が大ヒットし、今も多くの人に愛され、歌い継がれる理由が解るような気がします。
まとめ
ロス・インディオス&シルヴィア「別れても好きな人」の歌詞の意味を考察しました。
歌詞を読み解くと改めて素敵な余韻が漂う大人の恋の歌であるなぁと思いました。
また、かつての恋人同士の再会に雨がバックコーラスのように二人の舞台を演出してくれるようでもあります。
今でもカラオケのデュエット曲として人気があるのも頷けます。
ロス・インディオスといえば、「コモエスタ赤坂」「知りすぎたのね」などのヒットでも知られます。いずれも昭和のムード歌謡として筆者も好きな曲のひとつです。
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